外傷性ショックとは、重大な外傷によって血液循環が破綻し、臓器に十分な酸素が供給されなくなる危険な状態です。早期の診断と治療が命を救う鍵となります。本記事では外傷性ショックの原因、症状、治療法、予後などをわかりやすく解説します。

1. 外傷性ショックとは

1-1. ショックとは何か

ショックとは、何らかの原因で血液の循環が極端に低下し、全身の組織や臓器に酸素や栄養が届かなくなる状態を指します。これは生命を脅かす緊急事態であり、即座の対応が必要です。特に「外傷性ショック」は外部からの物理的な衝撃によって引き起こされるショックを指します。

1-2. 外傷性ショックの定義

外傷性ショックとは、大量出血や組織損傷などによって循環血液量が減少し、心臓が全身に十分な血液を送り出せなくなった状態をいいます。交通事故や転落事故、銃創、刺創などが主な原因です。

2. 外傷性ショックの主な原因

2-1. 大量出血

最も一般的な原因が大量出血です。骨盤骨折、大血管損傷、内臓損傷などにより体内外に大量の血液が失われることで、血圧が急激に低下しショック状態になります。

2-2. 胸部外傷

肺や心臓周囲に損傷を受けることで、心臓や肺の機能が阻害され、血液循環に重大な影響を与えます。緊張性気胸や心タンポナーデは命に関わる状態です。

2-3. 脊髄損傷

高位の脊髄損傷では、自律神経系に影響を与え、血管の緊張を保てず末梢血管が拡張し、血圧低下を招くことがあります。これを神経原性ショックと呼びます。

2-4. 重度熱傷

皮膚が広範囲に損傷すると体液が失われ、循環血液量が著しく減少するため、ショック状態に陥ります。

3. 外傷性ショックの主な症状

3-1. 意識障害

脳に十分な酸素が供給されないため、意識が朦朧としたり、反応が鈍くなったりします。重度の場合、意識を失うこともあります。

3-2. 血圧低下と頻脈

血液量の減少により血圧が低下し、それを補うために心拍数が増加します。初期には頻脈が顕著に現れます。

3-3. 冷感と皮膚蒼白

血流が重要な臓器へ優先的に供給されるため、四肢など末梢は血流が減少し、冷たく青白くなります。

3-4. 呼吸困難

酸素不足によって呼吸数が増加する過呼吸状態になることがあります。特に胸部外傷では肺の損傷により呼吸困難が強く現れます。

4. 診断方法

4-1. バイタルサインの評価

血圧、脈拍、呼吸数、意識レベルなどの基本的な生命兆候を確認します。ショックインデックス(脈拍数÷収縮期血圧)も有用な指標です。

4-2. 画像診断

CTや超音波検査を用いて、内臓損傷や出血源の特定を行います。FAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)と呼ばれる超音波検査は救急現場で広く使用されています。

4-3. 血液検査

ヘモグロビン値、乳酸値、血液ガス分析などを行い、出血の程度や酸素供給の状態を把握します。

5. 外傷性ショックの治療法

5-1. 輸液と輸血

初期治療では輸液により循環血液量を回復させると同時に、出血が著しい場合は輸血が必要となります。近年では出血性ショックに対してクリスタロイド液よりも血液製剤の早期投与が推奨されています。

5-2. 出血のコントロール

出血源を特定し、止血を行うことが最重要です。圧迫止血、止血帯、外科的止血、血管塞栓術など、状況に応じた方法が選択されます。

5-3. 酸素投与と気道確保

酸素化を維持するために酸素投与を行い、必要に応じて気管挿管や人工呼吸器管理が行われます。

5-4. 胸腔ドレナージや外科的治療

緊張性気胸や心タンポナーデなどでは緊急の胸腔ドレナージや開胸術が必要になる場合があります。

6. 外傷性ショックの予後とリスク

6-1. 早期治療の重要性

外傷性ショックは時間との戦いです。初期対応が早ければ早いほど、臓器障害や死亡率を大幅に減らすことができます。

6-2. 合併症のリスク

多臓器不全、敗血症、長期の集中治療管理が必要となることもあります。特に高齢者や既往症のある患者ではリスクが高まります。

6-3. 回復後のフォローアップ

ショックから回復しても、精神的トラウマや身体的後遺症が残ることがあります。心理的ケアやリハビリテーションが必要になるケースもあります。

7. 外傷性ショックの予防と対策

7-1. 安全対策の徹底

交通事故や労働災害による外傷を防ぐためには、ヘルメットの着用、シートベルトの利用、高所作業時の安全装備の徹底が不可欠です。

7-2. 応急処置の知識

一般の人でも、止血や応急処置の基本を知っておくことで、事故現場での初期対応が可能になります。救急救命講習の受講がおすすめです。

7-3. 医療体制の整備

地域の救急医療体制を整備し、重症患者を迅速に専門施設に搬送できる体制づくりも、外傷性ショックの予後を大きく左右します。

8. まとめ

外傷性ショックは極めて危険な状態であり、迅速な診断と治療が生死を分けます。外傷により急速に血液循環が破綻することで発生し、放置すれば致命的です。原因の特定と出血コントロールを最優先とし、適切な初期対応が求められます。万が一に備えて、応急処置の知識を持つことも重要です。

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