工夫や手段を尽くして何かを達成しようとする場面で使われる「あの手この手」。便利な表現ですが、文脈によっては他の言い方の方が適切な場合もあります。本記事では、「あの手この手」の意味やニュアンスを詳しく解説し、言い換え表現や類語を場面ごとに紹介。豊かな日本語表現力を身につけたい方はぜひ参考にしてください。
1. 「あの手この手」とは何か
1.1 基本的な意味
「あの手この手」とは、目的を達成するために、あらゆる手段や方法を次々と試すことを意味する慣用句です。特定の方法にとらわれず、柔軟に工夫を重ねていく様子を表現する際に用いられます。
1.2 使用される場面
・説得や営業など、人を動かす行為に関する文脈 ・工夫や創意工夫が求められる場面 ・問題解決のために手段を尽くす際
例文:「あの手この手を使って、彼を説得しようとした。」
1.3 文体とトーン
比較的カジュアルな表現のため、ビジネス文書やフォーマルな場面では言い換えが推奨されます。
2. 「あの手この手」の類語と使い分け
2.1 様々な手段を尽くすニュアンスの表現
これらは「あの手この手」と同様に、多様な方法を試す意味合いで使えます。
手を変え品を変え
意味:次々に手段を変えて挑むこと
例:「手を変え品を変えアプローチしても断られた。」
あらゆる手段を講じる
意味:利用可能な全ての方法を使うこと
例:「問題解決のためにあらゆる手段を講じた。」
ありとあらゆる方法を試す
意味:可能な限りの方法を尽くすこと
例:「目標達成のため、ありとあらゆる方法を試した。」
2.2 巧妙さ・計算高さを含む表現
使い方によっては、ややネガティブな印象を与えることもある表現です。
巧みに仕掛ける
意味:計画的・戦略的に方法を変える
例:「彼は巧みに仕掛けて相手を動かした。」
策略を巡らす
意味:頭を使って計略的に動く
例:「彼は策略を巡らし、相手を言いくるめた。」
工作をする
意味:裏で仕掛けを施すニュアンスも含む
例:「交渉を有利にするために政治的な工作を行った。」
3. 場面別「言い換え」フレーズと表現例
3.1 ビジネスシーンでの言い換え
フォーマルな文章やプレゼン資料では、「あの手この手」は避け、以下のような表現を使用しましょう。
「さまざまな方法を試みる」
「多角的なアプローチを実施する」
「柔軟な戦略で対応する」
例文:
「売上向上のため、あの手この手でプロモーションを展開している。」
→「売上向上のため、多角的なアプローチでプロモーションを展開している。」
3.2 日常会話で使えるカジュアルな言い換え
親しい相手との会話やSNS投稿では、砕けた言い回しでもOK。
「いろんな手を使って」
「とにかく色々やってみた」
「できること全部やった」
例文:
「子どもを寝かしつけるのにあの手この手でやっと成功した。」
3.3 説得や駆け引きに関する言い換え
心理的に相手を動かそうとする場面でよく使われるフレーズです。
「さまざまな説得手段を用いた」
「手段を尽くして交渉に臨んだ」
「心理戦を仕掛けた」
4. 英語での「言い換え」表現
4.1 英語での直訳と表現例
「あの手この手」に相当する英語表現には、複数のニュアンスがあります。
try every trick in the book
例:"He tried every trick in the book to win the deal."
(彼はその取引を勝ち取るためにあらゆる手段を使った。)
pull out all the stops
例:"We pulled out all the stops for the launch event."
(ローンチイベントでは全力を尽くした。)
use every means available
例:"She used every means available to convince them."
(彼女はあらゆる手を使って彼らを説得した。)
4.2 カジュアルな言い方
- **go all out**(全力を尽くす) - **leave no stone unturned**(徹底的に探す/努力する)
これらも場面に応じて使い分けると効果的です。
5. 「あの手この手」の表現がふさわしくない場面と注意点
5.1 品位が求められる公的文書や論文
論理性や中立性が求められる場面では、「あの手この手」は避けたほうが無難です。代わりに「多様な手法を検討した」などの表現が望まれます。
5.2 相手に対する配慮が必要な場合
「あの手この手」は場合によっては「しつこい」「強引」と受け取られることがあります。柔らかい言い換えを使って印象を調整しましょう。
5.3 ネガティブな印象を与えるケース
「策を弄する」「策略を練る」などの表現は、悪意があると誤解されることもあるため、文脈や相手との関係性に配慮が必要です。
6. まとめ
「あの手この手」という表現は、工夫や努力を重ねる様子を伝える便利な言い回しですが、使う場面や相手によっては他の言い方がより適切です。本記事で紹介した類語や言い換え表現を使い分けることで、伝えたい内容に最も合った表現が選べるようになります。ビジネスでも日常でも、状況に応じた表現を選ぶ力を身につけて、言葉の幅を広げましょう。