「矜持(きょうじ)」という言葉は、文学作品や新聞、ビジネスの場面などで見かけることがありますが、日常会話ではあまり使われません。意味を正しく理解していないと、誤用や場違いな印象を与えることもあります。この記事では、「矜持」の読み方、意味、例文、類語との違い、使う際の注意点までを丁寧に解説します。
1. 「矜持」の読み方と意味
1-1. 読み方は「きょうじ」
「矜持」は「きょうじ」と読みます。難読漢字であり、目にする機会はあっても、正しく読める人は少ないかもしれません。
1-2. 意味は「誇り」や「プライド」
「矜持」とは、自分自身の価値や信念を保とうとする心のことを指します。「誇り」や「プライド」に近い意味合いですが、内面的・精神的な強さや品格を含んだ表現です。
2. 「矜持」の使い方と例文
2-1. 自分の信念を保つ意味での使い方
・彼は記者としての矜持を持ち、どんな圧力にも屈しなかった。
・プロとしての矜持をかけて、完璧な仕事を追求している。
・医師としての矜持を失わず、どんな患者にも真摯に向き合う。
2-2. 自尊心や誇りの高さを表現するとき
・彼女は矜持の強い人物で、誰にも媚びることがなかった。
・会社の看板ではなく、自らの矜持を守って働いている。
・その決断には、彼なりの矜持が込められていた。
2-3. 否定的に用いられるケース
否定的な文脈でも、「矜持を失う」「矜持を忘れる」などの形で使われることがあります。
・金のために矜持を捨てたその姿に、かつての面影はなかった。
・彼の発言は、国民の矜持を踏みにじるものである。
・矜持を失えば、何のために生きているのかわからなくなる。
3. 「矜持」と似た言葉との違い
3-1. プライドとの違い
「プライド」は広く「誇り」「自尊心」を意味するカタカナ語で、口語的に使われやすい一方、「矜持」はやや硬い文語的表現です。また、「矜持」は他人への見せびらかしではなく、静かな信念を保つというニュアンスを強く持ちます。
3-2. 自尊心との違い
「自尊心」は、自分を大切に思う気持ちを意味します。「矜持」は、それに加えて「役割や責任を果たすことへの誇り」といった、道徳的・職業的な要素を含むことが多いです。
3-3. 自負との違い
「自負」は「自分の能力や価値に自信を持つこと」です。外的な評価に関係なく、自分で自分を評価する意識です。一方「矜持」は、自負を含みつつも、もっと精神的・倫理的な重みがあります。
4. 英語での「矜持」の表現
4-1. pride(プライド)
もっとも一般的な訳語は「pride」です。広い意味での誇りを指し、contextに応じて柔らかくも強くも使えます。
例文
He spoke with pride as a professional.
(彼はプロとしての誇りを持って語った)
4-2. dignity(尊厳)
「dignity」は、人間としての尊厳や品位を意味します。「矜持」に通じるニュアンスがあります。
例文
She held on to her dignity under pressure.
(彼女はどんな状況でも矜持を保ち続けた)
4-3. sense of honor / sense of duty
職業的な誇りや責任感としての「矜持」は、「sense of honor」や「sense of duty」と訳されることもあります。
5. 「矜持」を使うときの注意点
5-1. 日常会話には不向きな硬さ
「矜持」は文語的な表現であり、日常会話で使うと堅苦しく感じられることがあります。ビジネス文書やスピーチ、評論などでの使用が自然です。
5-2. 誤読に注意
「矜持」は「けんじ」と読まれがちですが、正しい読みは「きょうじ」です。文章中で使う場合はふりがなを添えると誤解を防げます。
6. まとめ
「矜持(きょうじ)」とは、自分の信念や職業的な誇りを守り、外的な圧力にも屈しない精神的な強さを意味する言葉です。「プライド」や「自尊心」と似ていながらも、より内面的で静かな品格を示す表現として使われます。ビジネスや文学、スピーチなどで説得力を高めたいときに活用できる語ですが、誤読や場違いな使用には注意が必要です。正しい意味と用法を理解して、場面に応じた言葉選びに役立てましょう。