「折り入って」は、真剣なお願いや重要な話を切り出すときに使われる改まった表現です。日常会話ではあまり見かけない一方で、ビジネスやかしこまった場面では重宝される言葉でもあります。本記事では、「折り入って」の正確な意味、語源、使い方、敬語表現との関係、誤用しやすい例、関連語との違いなどを網羅的に解説します。
1. 折り入っての基本的な意味
1.1 折り入ってとは何か
「折り入って(おりいって)」とは、「特別に」「真剣に」「丁寧に」といった意味合いを込めて使われる表現です。主に、人に何かを頼んだり相談したりするときの前置きとして用いられます。「折り入ってお願いがあるのですが」などの形で使い、相手に誠実な態度を示すことができます。
1.2 使われる場面
- ビジネスで上司や顧客に要望を伝える場面 - 結婚や転職などの重大な報告をする際 - 謝罪やお願いごとなど、誠意を見せたいとき
この表現は、軽い会話ではなく、真剣さや礼儀を求められる場面に適しています。
2. 折り入っての語源と歴史
2.1 折り入るの語源
「折り入る」は、「ある時点で深く関わる」「心を込めて相手に接する」といった意味を持つ古語が語源です。「折」は「機会」や「時」「節目」を指し、「入る」は「深く入る」「身を寄せる」という意味を持っています。つまり、「折り入る」とは「ある重要な機会に深く関わる」という意味から生まれた言葉です。
2.2 古典的な使用例
江戸時代の書簡や文学にも、「折り入ってお願い申し上げる」や「折り入って申し上げたきことあり」といった表現が使われていました。特に武家社会では、礼儀を重んじる文化の中で重要な役割を果たしていた語です。
3. 実際の使い方と例文
3.1 定型的な使い方
- 折り入ってお願いがございます。 - 折り入ってお話ししたいことがありまして。 - 折り入ってのお願いで恐縮ですが…。
3.2 ビジネスでの具体例
例1: 「折り入ってご相談があり、少々お時間をいただけますでしょうか。」
例2:
「折り入ってのお願いで恐縮ですが、本件について再検討いただけないかと存じます。」
3.3 プライベートでの用例
- 「折り入って話があるんだけど、少し時間をもらえる?」 - 「折り入ってお願いがあるの。今夜だけ、どうしても来てほしいの。」
4. 敬語表現との関係
4.1 「折り入って」は敬語か?
「折り入って」自体は敬語ではありませんが、敬意や真剣さを示す改まった語感があります。通常は尊敬語や謙譲語と組み合わせて使います。
4.2 正しい敬語の組み合わせ
- 折り入ってお願い申し上げます - 折り入ってご相談させていただきたく存じます - 折り入って申し上げる次第です
4.3 間違いやすい敬語表現
✕ 折り入ってお願いです(ややカジュアルすぎる) ○ 折り入ってお願いがございます(フォーマル) ✕ 折り入って頼みます(命令口調になる可能性あり) ○ 折り入ってお願い申し上げます(丁寧)
5. 折り入っての類語と言い換え表現
5.1 「恐れ入りますが」との違い
「恐れ入りますが」は、相手に負担や迷惑をかけることへの恐縮を示す表現です。一方で「折り入って」は、自分の真剣な気持ちを強調する言葉です。
5.2 「正直に言うと」との比較
「正直に言うと」は主に率直な意見を前置きするものであり、丁寧さや誠実さを示す点では「折り入って」のほうが適しています。
5.3 言い換え例
- 折り入って →「ぜひお願いしたく」「深くお願い申し上げ」「真剣に申し上げますが」 - 柔らかい表現では「ちょっとお話ししたいことがありまして」も代用可能です
6. 誤用しやすいパターンと対策
6.1 軽い話に使う
「折り入ってさ、今日のランチどうする?」というような使い方は不自然です。「折り入って」はあくまで改まった場面用の表現です。
6.2 上から目線に聞こえる言い方
「折り入って頼むよ」といったフレーズは、目上に使うと違和感があります。語尾に「お願い申し上げます」「いただけますでしょうか」を添えると自然です。
6.3 自分語りとセットにする
「折り入ってなんだけど、実は昨日さ…」という話し方は、真剣な雰囲気に水を差します。話の内容とトーンを一致させましょう。
7. 折り入ってが効果的な具体的シーン
7.1 社内提案や昇進希望
「折り入ってお願いがございます。新規プロジェクトについてご検討いただけないでしょうか。」
7.2 顧客への謝罪や要望
「折り入ってのご相談で恐縮ですが、納品スケジュールの調整をお願い申し上げます。」
7.3 重要な私事の報告
「折り入ってお話がございます。実は来月、退職を考えております。」
8. まとめ
「折り入って」は、真剣な話やお願いをする際に、相手への敬意や自分の誠意を込めて使う言葉です。古語に由来するため格式ある印象を与えられる一方、カジュアルな文脈では不自然になることもあります。正しい敬語と組み合わせ、文脈にふさわしい場面で使用することが、信頼を築く上で大切です。