「広辞苑(こうじえん)」は、日本でもっとも有名な国語辞典の一つとして知られています。学校、企業、図書館、そして家庭でも幅広く利用されており、「辞書といえば広辞苑」と言われるほどの存在です。この記事では、広辞苑の意味や歴史、特徴、そして最新版の改訂内容までをわかりやすく解説します。
1. 「広辞苑」とは
「広辞苑(こうじえん)」とは、岩波書店が編集・発行する日本語の国語辞典です。
一般的な国語辞典よりも内容が豊富で、語彙・用例・地名・人名・歴史・文化などを総合的に収録した百科的辞典として知られています。
1955年(昭和30年)に初版が刊行されて以来、時代の変化に合わせて改訂を重ねており、最新(第七版)は2018年に発行されました。
基本情報:
- 正式名称:広辞苑(Kōjien)
- 発行元:岩波書店
- 初版発行:1955年
- 編集主幹:新村出(しんむら いずる)
- 最新版:第七版(2018年)
2. 広辞苑の特徴
広辞苑の最大の特徴は、「国語辞典」でありながら、百科事典のように幅広い情報を収録している点です。単なる言葉の意味だけでなく、文化や歴史、地理、科学などの知識も網羅しています。
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 語彙数の多さ | 約25万語以上を収録(第七版時点) |
| 用例の充実 | 文学作品や新聞記事からの引用が多く、言葉の使われ方が分かる |
| 百科的要素 | 地名・人物・歴史用語・文化事項なども収録 |
| 伝統的文体 | 堅実で格調高い日本語表現を採用 |
そのため、広辞苑は単なる辞書以上に「日本文化の知の集大成」として位置づけられています。
3. 広辞苑の歴史
3-1. 初版(1955年)
戦後の日本で、新しい時代にふさわしい国語辞典として生まれたのが広辞苑です。
編集を主導したのは、京都大学名誉教授の新村出(しんむらいずる)。
彼の理念は「正確・平明・中立的」であり、文学的な美しさと学問的厳密さを兼ね備えた辞典を目指しました。
3-2. 改訂の歩み
| 版 | 発行年 | 主な改訂内容 |
|---|---|---|
| 第1版 | 1955年 | 初版刊行(約20万語収録) |
| 第2版 | 1969年 | 現代語・学術用語の追加 |
| 第3版 | 1983年 | カタカナ語・外来語が増加 |
| 第4版 | 1991年 | パソコン・通信など時代語の反映 |
| 第5版 | 1998年 | インターネット語や新語を大幅追加 |
| 第6版 | 2008年 | 21世紀初の全面改訂、現代語を拡充 |
| 第7版 | 2018年 | AI・SNS・環境問題など新語約1万語追加 |
4. 広辞苑の内容構成
広辞苑の本文は、五十音順で日本語を収録しています。
語義だけでなく、発音、語源、用例、そして関連事項まで記述されており、「読む辞書」としても楽しめる構成です。
また、巻末には次のような付録が収録されています。
- 度量衡・年号・官公庁一覧
- 世界の地名・人物索引
- 季語・故事成語・ことわざ・四字熟語一覧
- 外国語の略語・学術用語
このように、単なる「意味を調べるための辞典」ではなく、知識を広げるための総合的な日本語辞典として高く評価されています。
5. 広辞苑と他の国語辞典の違い
| 辞典名 | 特徴 |
|---|---|
| 広辞苑 | 百科的要素が強く、文化・地理・歴史も網羅。文章が格調高い。 |
| 大辞林 | 語釈がやややわらかく、現代語を多く扱う。 |
| 新明解国語辞典 | 語感・感情の説明が独特。解釈が主観的で人気。 |
| 明鏡国語辞典 | 文法・使い方の解説が丁寧で現代的。 |
このように、広辞苑は「文化的背景まで含めた日本語の辞典」としての性格が強いのが特徴です。
6. 広辞苑の最新版(第七版)の特徴
2018年に発行された第七版では、現代社会の新語・外来語を多数追加しています。
AI(人工知能)やSNS、LGBT、グローバル化、環境問題など、時代を反映する言葉が収録されました。
また、語釈の見直しや性差に関する表現の修正など、より中立的で現代的な辞典を目指しています。
7. 広辞苑のデジタル版・オンライン版
現在は、広辞苑を電子辞書やスマートフォンアプリ、オンライン版(「広辞苑第七版 for Web」など)で利用することも可能です。
紙の辞書よりも検索性が高く、音声・用例・リンク機能などが充実しています。
- 広辞苑 第七版 for iPhone/Android
- 広辞苑 for Kindle/電子辞書モデル(CASIO、SHARPなど)
- オンライン辞書サービス「コトバンク」「JapanKnowledge」などでの閲覧
8. まとめ
「広辞苑(こうじえん)」とは、日本語と日本文化を体系的に記録した国語辞典の最高峰です。
単なる言葉の意味を調べるだけでなく、日本の社会・文化・歴史を知る手がかりにもなります。
初版から半世紀以上経った今も改訂が続けられ、時代の言葉とともに進化し続ける“生きた辞典”として、多くの人に親しまれています。
