数学の基礎である分数の中でも「既約分数」は、理解しておくことが非常に重要です。既約分数は分母と分子の最大公約数が1である分数であり、計算や応用の際に便利です。本記事では定義から計算方法、応用例、さらに注意点まで詳しく解説します。

1. 既約分数の基本概念

既約分数とは、分数の分子と分母が互いに素(最大公約数が1)である状態の分数を指します。つまり、これ以上簡単に約分できない分数です。

1-1. 定義

分数 \(\frac{a}{b}\) において、分子 \(a\) と分母 \(b\) の最大公約数が1である場合、その分数を既約分数と呼びます。 例:\(\frac{3}{4}\)、\(\frac{5}{7}\) は既約分数。 例:\(\frac{6}{8}\) は分子と分母の最大公約数が2であるため、既約分数ではなく、\(\frac{3}{4}\) に約分できます。

1-2. 互いに素とは

互いに素とは、2つの整数が1以外に共通の約数を持たないことです。既約分数の定義では、分子と分母が互いに素である必要があります。

2. 既約分数の求め方

既約分数にするには、分子と分母の最大公約数(GCD)を求め、それで両方を割ります。

2-1. 最大公約数の求め方

最大公約数は、ユークリッドの互除法を使うと簡単に求められます。 手順: 1. 大きい数を小さい数で割る 2. 余りが0になるまで繰り返す 3. 最後に余りが0になる直前の余りが最大公約数
例:
18
24
24
18

の場合
24 ÷ 18 = 1 余り 6
18 ÷ 6 = 3 余り 0
→ 最大公約数は6

2-2. 約分の手順

最大公約数を使って分子と分母を割ります。 例:\(\frac{18}{24}\) ÷ 6 = \(\frac{3}{4}\) これで既約分数になります。

2-3. 素因数分解を使った方法

分子と分母を素因数分解し、共通の素因数を取り除く方法でも既約分数を求められます。 例:\(\frac{18}{24} = \frac{2 \cdot 3^2}{2^3 \cdot 3} = \frac{3}{4}\)

3. 既約分数の性質

既約分数にはいくつか重要な性質があります。

3-1. 分数の一意性

同じ値を表す分数は、既約分数にすると一意になります。 例:\(\frac{6}{8} = \frac{3}{4}\)、\(\frac{9}{12} = \frac{3}{4}\)

3-2. 足し算・引き算の性質

既約分数同士の足し算や引き算でも、計算後は再度既約分数に約分できます。 例:\(\frac{1}{3} + \frac{1}{6} = \frac{2}{6} + \frac{1}{6} = \frac{3}{6} = \frac{1}{2}\)

3-3. 掛け算・割り算の性質

掛け算では分子同士、分母同士を掛けた後、既約分数に直すことができます。 例:\(\frac{2}{3} \times \frac{3}{4} = \frac{6}{12} = \frac{1}{2}\)
割り算の場合は、逆数を掛けます。
例:
2
3
÷
3
4
=
2
3
×
4
3
=
8
9
3
2

÷
4
3

=
3
2

×
3
4

=
9
8

4. 既約分数の応用

既約分数は数学の多くの分野で応用されます。

4-1. 小数への変換

既約分数は小数に変換する際も便利です。分母が2の累乗や5の累乗の場合は有限小数に、その他は循環小数になることがあります。

4-2. 比率・割合の計算

比や割合の表現にも既約分数は使われます。例えば、2:3 の比を分数で表すと \(\frac{2}{5}\) と \(\frac{3}{5}\) になります。

4-3. 分数の比較

既約分数にしておくと、分数同士の大小比較が容易になります。共通分母に揃えたり、通分して比較できます。

5. 既約分数の注意点

既約分数を扱う際にはいくつか注意点があります。

5-1. 負の分数

分数が負の場合、負の符号は分子に置くのが一般的です。 例:\(-\frac{3}{4}\) は既約分数、\(\frac{-3}{4}\) と表記可能ですが \(\frac{3}{-4}\) は避ける

5-2. 0を含む分数

0を分子に持つ分数は既約分数です。 例:\(\frac{0}{5}\) = 0(既約分数) ただし、分母が0の場合は定義されません。

5-3. 約分の忘れ

計算後に必ず既約分数に直す習慣をつけると、計算ミスや混乱を防げます。

6. 既約分数の例題

いくつか例題で理解を深めましょう。

6-1. 例題1

\(\frac{12}{18}\) を既約分数にせよ。 解答:最大公約数は6 → \(\frac{12÷6}{18÷6} = \frac{2}{3}\)

6-2. 例題2

\(\frac{45}{60}\) を既約分数にせよ。 解答:最大公約数は15 → \(\frac{45÷15}{60÷15} = \frac{3}{4}\)

6-3. 例題3(負の分数)

\(\frac{-20}{30}\) を既約分数にせよ。 解答:最大公約数は10 → \(\frac{-20÷10}{30÷10} = \frac{-2}{3}\)

7. まとめ

既約分数は、分数の基礎概念として非常に重要です。分子と分母の最大公約数を求め、約分することで求められます。数学の計算、比率、割合、小数変換など多くの場面で応用され、分数を簡単に扱うための基本的なスキルです。負の分数や0の分数に関する注意点も理解しておくと、より正確な計算が可能になります。既約分数を理解し活用することは、数学の幅広い分野で役立つ知識となります。

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