「既往(きおう)」という言葉は、医療や法律の分野でよく使われる専門用語のひとつです。過去の経歴や既に起こった出来事を指す言葉として幅広く用いられています。本記事では「既往」の意味や使い方、医療や法律での具体的な用法、類語や英語表現について詳しく解説します。

1. 既往の基本的な意味と読み方

1.1 「既往」の読み方

「既往」は「きおう」と読みます。比較的専門的な言葉ですが、医療関係者や法律関係者の間で頻繁に使われています。

1.2 「既往」の基本的意味

「既往」とは、「過去にすでに経験したこと」や「これまでに起こったこと」を意味します。特に医療の場では「過去にかかった病気やけが」を指す言葉として使われます。

1.3 日常会話との違い

日常会話ではあまり使われませんが、専門的な文章や報告書、診断書などでよく見かける言葉です。類似する表現に「過去」「既往歴」「以前」がありますが、微妙にニュアンスが異なります。

2. 医療における既往の使い方

2.1 既往歴とは何か?

医療現場で最も一般的に使われるのが「既往歴(きおうれき)」という言葉です。これは患者が過去に経験した病気やけがの履歴を指します。診断や治療方針を決めるうえで非常に重要な情報となります。

2.2 既往歴の重要性

患者の病歴を把握することで、現在の症状の原因を探る手がかりになります。また、薬の副作用やアレルギーの有無を確認し、適切な治療を行うためにも不可欠です。

2.3 具体的な例

- 「患者の既往歴には高血圧と糖尿病が含まれている。」 - 「既往歴に心臓病があるため、手術は慎重に行う必要がある。」

2.4 既往症との違い

「既往症(きおうしょう)」も過去の病気を指しますが、主に「現在は治っているが過去に罹患した病気」を意味します。既往歴はもっと広い意味で、過去のすべての病気やけがを含みます。

3. 法律における既往の意味

3.1 法律文書での使われ方

法律の文脈では、既往は「過去に成立した事実や状況」を示します。特に契約や権利関係の文書で「既往の権利」や「既往の状態」が問題になることがあります。

3.2 既往権利・既往状態の概念

「既往権利」とは、すでに存在している権利のことを指し、新たに発生する権利や義務との関係で重要になります。たとえば、土地の利用権や建物の所有権などが該当します。

3.3 例文

- 「本契約は既往の権利関係を変更するものではない。」 - 「既往の事実を尊重しつつ、今後の対応を検討する。」

4. 既往の類語・関連語

4.1 過去(かこ)

「過去」は単に「以前の時間」を指し、日常的に使われます。既往が専門的に「経験したこと」を強調するのに対し、過去はより広い時間概念です。

4.2 既往歴(きおうれき)

医療分野で使われる「過去に経験した病気やけがの履歴」を指します。既往の中でも特に病歴を示す用語。

4.3 履歴(りれき)

「履歴」は過去の事実の記録や経歴を指し、医療や法律以外にも広く使われます。

4.4 経歴(けいれき)

「経歴」は人の職業や学歴など過去の経歴を指すことが多く、既往よりも限定的です。

5. 既往の英語表現

5.1 医療用語としての既往歴

- Past medical history(PMH):医療現場で使われる「既往歴」の代表的英訳。 - Medical history:一般的な医療履歴。

5.2 法律用語としての既往

- Previous case / Prior case:過去の事例や事件。 - Pre-existing condition:特に保険用語で使われる「既往症」の意味。

5.3 例文

- The patient's past medical history includes hypertension and asthma.(患者の既往歴には高血圧と喘息が含まれています。) - The contract does not affect prior rights.(本契約は既往の権利に影響を与えない。)

6. 既往に関連する専門用語の解説

6.1 既往症(きおうしょう)

すでに治った、あるいは現在も持続している病気や症状。保険や医療の重要な項目です。

6.2 既往歴(きおうれき)

患者の過去に経験した全ての病気や手術の履歴。

6.3 既往疾患(きおうしっかん)

過去に診断された病気や疾患のこと。慢性疾患などは治療方針に影響します。

6.4 既往症の申告と保険

生命保険や医療保険に加入する際、既往症の有無を申告する必要があります。既往症がある場合、保険料が高くなる、あるいは加入を拒否されることもあります。

7. 既往の使い方のポイントと注意点

7.1 医療の場面で正確に伝えること

患者は自分の既往歴を医師に正確に伝えることが治療において重要です。不明確な既往歴は診断ミスの原因となることがあります。

7.2 法律文書での慎重な使用

法律の文書で「既往」という言葉を使う際は、過去の事実や権利関係を明確にし、誤解のない表現が求められます。

7.3 一般的な場面では使わない

日常会話で使うには硬すぎる言葉のため、ビジネスや専門分野以外では「過去」や「以前」などの言葉を使うことが望ましいです。

8. まとめ

「既往」とは、過去にすでに経験したことや起こった事実を指し、特に医療の分野では患者の過去の病歴を示す重要な用語です。法律でも過去の権利関係や事実を示す場面で使われます。類語には「過去」「既往歴」「既往症」などがあり、英語では「past medical history」や「prior rights」などが対応します。専門的な意味合いが強い言葉のため、適切な場面で正しく使うことが求められます。

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