「全うする」という言葉はニュースやスピーチ、日常会話でも使われる表現ですが、具体的な意味や正しい使い方を理解している人は少なくありません。この記事では、「全うする」の意味、使われる場面、類語との違い、注意点などを丁寧に解説します。
1. 「全うする」の意味とは
「全うする」は、「最後まで成し遂げる」「完全に果たす」「完全に遂げる」という意味を持つ表現です。物事を途中で投げ出さず、責任を持って完結させることを指します。
この言葉はフォーマルな印象を与えるため、ビジネスや式辞、新聞、公式文書などのかしこまった文脈で使われることが多いです。
2. 「全うする」の語源と由来
2.1 「全う」は「完全・完結」を意味する
「全う(まっとう)」は漢字の通り、「完全」「全体」「完了」といった意味合いを持つ言葉です。「全」という文字には「すべて」「欠け目がないこと」、「うする」は「行う」「成し遂げる」を意味する古語的表現です。
2.2 古くから使われる日本語の表現
「全うする」という表現は古典文学や仏教語にもみられ、昔から「人としての務めを果たす」「命を全うする」などの文脈で使われてきました。現代でも品格を感じさせる表現として根強く使われています。
3. 「全うする」の使い方と例文
3.1 一般的な使い方
・任務を全うする ・人生を全うする ・責任を全うする
これらの例に共通するのは、「始めたことや与えられたことを、途中で放棄せずにきちんとやり遂げる」というニュアンスです。
3.2 例文で理解を深める
・「彼は与えられた役割を最後まで全うした」 ・「母は自分の人生を全うして、静かに旅立ちました」 ・「リーダーとしての責任を全うすることが求められる」
どの文も「やり遂げる」「果たす」という意味で使われており、堅い印象があります。
4. 「全うする」が使われる主な場面
4.1 ビジネス・社会的な文脈
・契約や任務を完遂する際に ・退職時の挨拶で「職務を全うしました」と述べると丁寧な印象を与える ・社員や上司のスピーチ、経営者の文章で好まれる表現
4.2 弔辞・追悼文での使用
人生や使命を果たして亡くなった方に対して「人生を全うされた」と表現することがあります。この言い回しは丁寧で敬意を込めたものとして受け入れられています。
4.3 日常生活では控えめに使われる
「全うする」は少しかしこまった言葉なので、カジュアルな日常会話ではあまり頻繁には使われません。ただし、文章表現や強調したい場面で用いると効果的です。
5. 類語との違い
5.1 「やり遂げる」との違い
「やり遂げる」は比較的口語的で、努力を重ねて最終的に達成するという意味です。対して「全うする」は形式ばった表現であり、より重みや責任感を伴う場合に使われます。
5.2 「果たす」との違い
「果たす」も任務や目的を遂げるという意味ですが、「全うする」はその過程や結果をより強調する印象があります。特に「責任を全うする」は定型的に使われますが、「責任を果たす」よりも格式が高いとされることもあります。
5.3 「完了する」との違い
「完了する」は機械的・事務的な意味合いが強く、「全うする」はそこに意志や使命感が加わります。したがって、仕事をただ終えたというよりも、責任をもってやり遂げたときに「全うする」を使います。
6. 「全うする」を使う際の注意点
6.1 言葉の格調に合わせた文脈選び
あまりにもカジュアルな文脈で「全うする」を使うと、やや浮いてしまう可能性があります。スピーチ、手紙、公式文書など、丁寧な文章やフォーマルな場面に適しています。
6.2 意味を取り違えない
「全うする」は「満足する」「適当に終える」という意味ではありません。「やり遂げる」という意味を含んでいるため、使い方には十分注意が必要です。
6.3 漢字の誤用に注意
「全う」の「全」を「満」と誤って書いてしまうケースもあります。「全力」「完全」の「全」であることをしっかり認識しましょう。
7. 「全うする」の現代的な位置づけ
7.1 価値観の変化と共に
現代では「途中で辞めることも正解」とする価値観も広まっていますが、それでも「全うする」という言葉には一種の美徳や尊敬の念がこもっています。完遂する姿勢は、時代を問わず評価されるものです。
7.2 SNSやメディアでの使用
ニュース記事や著名人の発言などでも「職責を全うする」「命を全うする」といった表現は頻繁に使われます。読み手に対して責任感や誠意を伝える手段として重宝されています。
8. まとめ
「全うする」とは、与えられた役割や任務、人生などを最後まで責任をもってやり遂げることを意味します。その重みや格式から、ビジネス文書や公式発言、弔辞などで広く使われています。類語と比較することで、その使い方やニュアンスを理解しやすくなります。正しく使えば、相手に誠実さや信頼感を伝えることができる表現です。