今般（こんぱん）は、ビジネス文書や公的な通知でよく用いられる言葉ですが、単なる「今回」や「このたび」とは異なるニュアンスがあります。正しく使わなければ、堅苦しい印象を与えたり、誤解を生むこともあります。本記事では「今般」の意味や由来、使い方のポイント、類語との違い、具体的な使用例、注意点まで詳しく解説します。ビジネス文章で品格のある表現を身につけたい方におすすめです。
1. 「今般」の意味と基本的な使い方
1.1 「今般」とは？
「今般」は「このたび」や「今回」を意味する改まった表現です。単に「今回」と言うよりも、ビジネスや公的文書での正式な言い回しとして使われ、文章に格式を与えます。話し言葉としてはあまり使われません。
1.2 「今般」のニュアンス
「今般」は、話題にしている出来事が新しく重要であることを強調するニュアンスがあります。単なる時点を示す「今回」と比べると、より重みを持たせたい時に使う表現です。
2. 「今般」の語源と歴史的背景
2.1 漢字の意味から見る「今般」
「今」は現在、「般」は「広く多くのこと」を意味します。組み合わせると「現在の広範囲の出来事」という意味が生まれ、単なる「今回」よりも広く重要な範囲を含意します。
2.2 明治期から現代への定着
「今般」は明治時代に公文書で使われ始め、官庁や企業の公式文書で定着しました。現在も公的な文章やビジネス文書での正式表現として使われ、格式ある印象を与えます。
3. 類語と比較しながら理解する「今般」
3.1 「今回」との違い
「今回」は話し言葉でも書き言葉でも使われ、もっとも一般的な「今回の出来事」を示します。一方、「今般」はより堅苦しく、公式の場面に限定されることが多いです。
3.2 「このたび」との違い
「このたび」も改まった表現ですが、「今般」と比べるとやや柔らかい印象です。挨拶文や案内文でよく使われますが、「今般」はもっと事務的、正式な通知に適しています。
3.3 「先般」「過日」「昨今」との使い分け
- 「先般」は過去の特定の時期を指し、「先般の会議」のように用います。 - 「過日」は「先般」よりもやや古風で、文書での表現が多いです。 - 「昨今」は「最近の傾向」を指し、時点ではなく期間を示す言葉です。
「今般」は現在進行形や直近の出来事に使うのに対し、これらの言葉は過去を示すことが多いため混同に注意が必要です。
4. 「今般」の具体的な使い方と例文
4.1 ビジネスシーンでの活用例
- 「今般の人事異動に伴い、ご挨拶申し上げます。」 - 「今般、新規プロジェクトを立ち上げましたのでご報告いたします。」 - 「今般の調査結果をご確認ください。」
これらは企業の通知や案内、報告書でよく見られ、改まった印象を与えます。
4.2 お詫びや感謝の文書に使う場合
- 「今般の不手際により、多大なるご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。」 - 「今般は格別のご支援を賜り、厚く御礼申し上げます。」
正式な謝罪文や感謝状においてもよく使われます。
4.3 公的なお知らせ・案内文での例
- 「今般の災害により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。」 - 「今般の法改正に伴い、下記のとおり対応いたします。」
社会的な公示文でも、公式感を高める言葉として有効です。
5. 「今般」を使う際の注意点
5.1 使う場面を選ぶことが大切
「今般」は格式が高いため、くだけた文脈や親しい相手とのメールには不適切です。社内のカジュアルなやりとりでは「今回」や「このたび」を使いましょう。
5.2 日付の補足を忘れずに
「今般」は時間の範囲が曖昧になることがあるため、重要な文書では「今般（令和○年○月）」のように具体的な日付を添えると親切です。
5.3 類語の誤用を避ける
「先般」と「今般」は意味が異なり混同されやすいので注意しましょう。「先般」は過去のこと、「今般」は現在または最近の出来事を指します。
6. 「今般」を使ったビジネス文書の例文集
6.1 新規事業開始の案内
「今般、弊社では新規事業として●●サービスを開始いたしました。今後ともご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。」
6.2 人事異動の通知
「今般、下記の通り人事異動がありましたのでご報告申し上げます。何卒よろしくお願いいたします。」
6.3 お詫び文書
「今般のトラブルにより、ご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。再発防止に努めてまいります。」
6.4 感謝状
「今般は格別のご支援を賜り、心より御礼申し上げます。今後とも変わらぬご厚情をお願い申し上げます。」
7. まとめ
「今般」は単なる「今回」よりも格式を備えた言葉で、ビジネスや公的文書で重要な出来事を丁寧に伝えたいときに用いられます。
類語である「今回」「このたび」「先般」との使い分けが大切で、適切に使い分けることで文章全体の品格が高まります。使う場面を選び、必要に応じて具体的な日付を添えることで、読み手に対して誤解のない丁寧な表現になります。
正しく理解し、場面に応じて使いこなせば、あなたの文章力はさらに向上することでしょう。
