ビジネスの場面やフォーマルな文章で目にすることのある「仰せつかり」という表現。この言葉は一見古風に感じられますが、丁寧な言い回しとして現代でも十分に通用します。この記事では、「仰せつかり」の正確な意味、語源、ビジネスシーンにおける使い方や例文、注意点、そして言い換え表現について詳しく解説します。

1. 「仰せつかり」の意味と語源

1-1. 「仰せつかり」の意味

「仰せつかり」は、「仰せつかる」の連用形です。「仰せつかる」とは、「(目上の人から)命じられる」「指示・依頼を受ける」という意味を持つ謙譲語です。つまり、「仰せつかり」は何かを命じられたり、依頼されたりしたことをへりくだって表現する形です。

1-2. 語源と背景

「仰せ」は「おおせ」と読み、古くは「言う」「命じる」の尊敬表現として使われてきました。「つかる」は「受ける」「承る」という意味を含みます。これらが組み合わさり、「仰せつかる」は「(目上の人の)言葉や命令を受ける」ことを丁寧に表現した語です。

2. 「仰せつかり」の使い方

2-1. ビジネス文書や挨拶文での使用

「仰せつかり」は主に書き言葉として使用される傾向が強く、挨拶文やスピーチなど、改まった場面で見かけることが多い表現です。

例文:
「このたび、◯◯の任を仰せつかり、身の引き締まる思いでございます。」
「皆様のご期待に沿えるよう、仰せつかった業務に全力で取り組んでまいります。」

2-2. 口語ではやや堅苦しい

日常的な会話やカジュアルなビジネスメールでは、「仰せつかり」は少し堅すぎる印象を与えることもあります。そのため、フォーマルなスピーチや挨拶、公式文書などに適した表現です。

2-3. 敬語としての位置づけ

「仰せつかり」は謙譲語であり、自分をへりくだることで相手を立てる表現です。したがって、自分が目上の人物から依頼や命令を受けたことを表す際に使います。目下の人や同僚からの依頼に対して用いるのは不自然なので注意が必要です。

3. 「仰せつかり」の言い換え表現

3-1. 「拝命し」

「仰せつかり」と同様、何かの任務や役職を受けたことを丁寧に述べる表現で、「命じられたことをありがたく受ける」という意味合いがあります。

例文:
「このたび、プロジェクトリーダーを拝命し、誠に光栄に存じます。」

3-2. 「お引き受けし」

少し柔らかい印象になりますが、謙譲語として適切な言い換え表現です。依頼を丁寧に引き受けるニュアンスを含みます。

例文:
「ご依頼の件、お引き受けいたしました。」

3-3. 「承り」

「仰せつかり」よりも汎用性が高く、口語的にも使いやすい表現です。「うけたまわり」と読みます。

例文:
「その件、確かに承りました。」

4. 使用時の注意点

4-1. 適切な相手・場面で使う

「仰せつかり」は謙譲語であるため、自分が相手の依頼や命令を受けた場合に限定して使う必要があります。対等または目下の立場の人からの依頼に対して使うと、過剰に丁寧で不自然な印象を与えてしまいます。

4-2. 他の敬語と混同しない

尊敬語と謙譲語の違いを意識して使いましょう。たとえば、「仰せつける」は尊敬語で、「仰せつかる」は謙譲語です。自分が動作の主体であるときには「仰せつかり」を使います。

4-3. 過剰な敬語に注意

「仰せつかりいただきました」など、二重敬語や冗長な表現は避けましょう。謙譲語を重ねすぎると不自然になり、逆に敬意を欠いているように感じられることもあります。

5. よく使われる構文と例文

以下は、ビジネスや式典の挨拶文などでよく使われる構文と例文です。

構文例:
・「◯◯の任を仰せつかり、光栄に存じます。」
・「◯◯を仰せつかりました◯◯と申します。」
・「仰せつかった業務を全うする所存です。」

例文1:
「このたび、販売促進プロジェクトのリーダーを仰せつかり、責任の重さを痛感しております。」

例文2:
「新規事業立ち上げを仰せつかり、皆様と協力しながら進めてまいります。」

6. まとめ

「仰せつかり」は、目上の人からの依頼や命令をへりくだって受ける際に使われる謙譲語であり、主にビジネスや公式の場で使用されます。現代ではやや堅い表現に感じられるものの、挨拶文やスピーチなどでは今なおよく使われており、適切に使えば丁寧で信頼感のある印象を与えることができます。言い換え表現も場面によって使い分けることで、より自然で誠実なコミュニケーションが可能になります。

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