日常的なビジネス会話や契約文書などで頻繁に用いられる「双方」という言葉。しかし、正確な意味や使い方を問われると曖昧な理解のまま使っているケースも少なくありません。本記事では、「双方とは何か」を起点に、正しい用法、具体例、注意すべき誤用まで、実務に役立つ情報を詳しく解説します。
1. 「双方」とは?言葉の基本的な意味
1.1 辞書的な定義
「双方(そうほう)」とは、「ふたつの側」や「ふたつの当事者」のことを指す言葉です。具体的には、A社とB社、または買い手と売り手など、関係性を持つ二者を表現する際に使われます。
例:
契約の締結には双方の合意が必要です。
双方の意見が一致すれば、提携は実現可能です。
1.2 「一方」との違い
「双方」は、あくまで「両者」を指しますが、「一方」はそのうちの片方のみを意味します。この違いを混同すると、誤った認識を招くため注意が必要です。
例:
誤:「一方の合意が得られたため契約成立」→ 正しくは「双方の合意」
2. ビジネスでの「双方」の使い方と場面
2.1 契約関連での使用例
ビジネスシーンで最も多く「双方」が登場するのは、契約書や覚書といった正式な文書です。そこでは、企業や個人などの「当事者間の合意」を強調するために使われます。
使用例:
「本契約は、双方の合意により締結される。」
「本契約を解除する場合は、双方の書面による同意が必要とする。」
2.2 商談やメールでの活用
日常的な業務連絡や商談の場でも、相手方との意思一致を強調するために「双方」という表現がよく使われます。
使用例:
「双方のスケジュールを調整し、来週火曜日に会議を設定しました。」
「ご提案いただいた内容につきまして、弊社でも検討の上、双方にとって最適な条件を模索したいと考えております。」
2.3 クレーム対応・交渉時の応用
利害が絡む場面で「双方」という言葉を使うと、客観的で中立的な姿勢を示すことができます。
例:
「本件については、双方の誤解が原因であると認識しております。」
「今後は、双方の立場を尊重したうえで、円満な解決を目指します。」
3. 「双方」の類義語・言い換え表現
3.1 主な類義語と使い分け
「双方」と近い意味を持つ言葉には以下のようなものがあります。
類義語 意味 適用場面
両者 双方とほぼ同義 やや口語的、会話文に向く
当事者双方 法的・契約的に使うことが多い 契約書・覚書
二者 論理的な文章で使うことが多い 学術論文・報告書
例文:
「両者の認識に相違がある」→ より日常会話的
「当事者双方の同意を得た上で手続きを進める」→ 法的文脈に強い
3.2 英語での言い換え
「双方」を英語にする場合、以下のような表現が使えます。
both parties(契約文書)
both sides(意見や立場を指す時)
the two parties(ややフォーマル)
例文:
The contract requires consent from both parties.
Let's ensure that both sides understand the risks.
4. 「双方」を使う際の注意点
4.1 曖昧な「双方」は誤解を招く
「双方」という言葉は便利な反面、誰と誰を指しているかが曖昧になることがあります。文脈によっては、第三者にとって意味が伝わりにくくなる場合があるため、使用する際には明確にする工夫が必要です。
NG例:
「双方の認識の違いが問題の原因です。」→ 誰と誰かが不明確
改善例:
「弊社と貴社の認識の違いが問題の原因です。」
4.2 「三者以上」の場合は不適切
「双方」はあくまで「2者」の関係を指します。3者以上の関係性に対して使用すると誤用となります。
NG例:
「3社間の協議により、双方が合意しました。」→ 矛盾が生じている
改善例:
「3社間の協議により、各社が合意に至りました。」
5. よくある誤用例とその訂正方法
5.1 ビジネスメールでの誤用
誤用例:
「双方で確認しながら進めたいと考えております。」(誰と誰?)
訂正例:
「貴社と弊社で確認しながら進めたいと考えております。」
5.2 プレゼンや報告書での曖昧表現
誤用例:
「双方にとってメリットがあると考えています。」
訂正例:
「クライアント企業様および弊社にとってメリットがあると考えています。」
6. ケース別:適切な「双方」の使い方テンプレート
6.1 契約書
「本契約は、双方の同意に基づき、以下の条項に従って締結されるものとする。」
6.2 商談メール
「このたびは貴重なお時間をいただきありがとうございました。双方にとって最良の形となるよう、引き続きご協議させていただければと存じます。」
6.3 クレーム処理報告書
「本件に関し、双方の見解を整理のうえ、再発防止策を協議・実行いたしました。」
7. まとめ:「双方」は明確かつ丁寧に使うことが鍵
「双方」という言葉は、ビジネスにおいて中立的・公平な視点を示す非常に便利な表現です。ただし、意味があいまいになりやすく、文脈を誤ると混乱や誤解を招くこともあります。常に「誰と誰か」を明確に意識し、状況に応じて具体的な当事者名を加えることが、正確で信頼される文章・発言につながります。正しく使いこなすことで、相手との関係を円滑にし、ビジネスをよりスムーズに進めることができるでしょう。