ビジネスシーンにおいて、丁寧で適切な言葉遣いは信頼の基盤です。中でも、「お待ちいたします」は多くのシーンで使われる敬語表現の一つです。しかし、敬語として正しいか、ニュアンスは適切かなど、悩む方も少なくありません。この記事では、「お待ちいたします」の意味や使い方、間違いやすいポイントを実例とともに解説し、円滑なコミュニケーションを支える言葉遣いを身につけていきましょう。
1. 「お待ちいたします」の基本的な意味と構造
1-1. 「お待ちいたします」は謙譲語の一種
「お待ちいたします」は、「待つ」に謙譲表現の「いたす」を加えた敬語表現です。話し手が自分の行動をへりくだって伝える「謙譲語」に該当します。
たとえば、来客を待つときに「お待ちいたします」と言えば、「私はあなたを待ちますが、それを控えめに申し上げます」というニュアンスになります。
1-2. 「お待ちしております」との違い
「お待ちいたします」と混同されやすいのが「お待ちしております」です。どちらも謙譲語ですが、以下の違いがあります。
お待ちいたします:やや形式的・硬めな表現。電話やメールなどでのビジネス連絡に適しています。
お待ちしております:少し柔らかい印象を与える表現。対面や接客業での使用に適しています。
状況や相手との関係性に応じて使い分けるとよいでしょう。
2. ビジネスシーンにおける使用例と注意点
2-1. 電話対応での「お待ちいたします」
電話対応中に相手を保留にする場合、次のような表現が自然です。
「少々お時間をいただきます。お待ちいたしますので、そのままでお待ちくださいませ。」
ここで重要なのは、相手に不快感を与えない丁寧な言い回しと、行動の説明を組み合わせることです。
2-2. メールでの「お待ちいたします」
ビジネスメールでは、「お待ちいたします」は締めの文や、回答を待つ場面で効果的に使われます。
「ご確認のうえ、ご返信いただけますようお願い申し上げます。お返事をお待ちいたします。」
メールでは「お待ちしております」よりも、「お待ちいたします」のほうがフォーマルで信頼感を与える効果があります。
2-3. 実際の対面での応対
対面で来客を迎える場合、やや柔らかい言い回しにすることで自然な印象を与えられます。
「○○様がいらっしゃるまで、こちらでお待ちいただけますでしょうか。私も一緒にお待ちいたします。」
このように、場面ごとに表現を微調整することが求められます。
3. よくある間違いとその改善方法
3-1. 二重敬語に注意
「お待ちになられます」は、「お〜になる」と「〜られる」が重なった二重敬語の例です。正しくは「お待ちになります」となります。
また、「お待ちいたしております」も厳密には二重敬語にあたりますが、ビジネスでは慣用表現として許容される場面もあります。とはいえ、フォーマルな文面では「お待ちいたします」が無難です。
3-2. 自分主体か相手主体かを見極める
「お待ちいたします」は自分の行動を表しますが、時に相手の動作と混同されることがあります。
NG例:「お待ちいたしてください」
→「お待ちください」が正解。相手に対してへりくだるのは文法的に誤りです。
正しい敬語の使い分けには、主語が誰かを意識することが重要です。
4. 「お待ちいたします」の適切な言い換え表現
4-1. 柔らかい印象を与える表現
状況によっては、「お待ちいたします」がやや堅く感じられることがあります。そうした場合には以下の表現が使えます。
「お待ちしております」
「お時間までごゆっくりお過ごしください」
「しばらくお時間を頂戴いたします」
これらはお客様対応や接客業で自然な印象を与えるのに適しています。
4-2. ビジネス文書で使える丁寧表現
文書や報告書では、さらにフォーマルな言い回しが求められることもあります。
「ご連絡を心よりお待ち申し上げております」
「ご都合のよいタイミングでご連絡いただけますと幸いです」
相手の行動を促す際にも、控えめかつ丁寧な表現がポイントです。
5. 「お待ちいたします」を使う際の心構え
5-1. 形式美だけでなく、心を込めて
丁寧な言葉遣いはもちろん大切ですが、形式だけにとらわれてしまうと、かえって冷たい印象を与えてしまうこともあります。敬語の裏側にある気遣いや、相手への配慮を忘れずに使いましょう。
5-2. 相手の立場に立った対応を
「お待ちいたします」は、自分が待つ立場を示す言葉ですが、その背景には「相手の時間を尊重する」という価値観があります。「待たせて申し訳ない」という気持ちを言葉に乗せて伝えることで、より良い印象を残すことができます。
6. まとめ
「お待ちいたします」は、ビジネスの場で頻繁に使われる表現でありながら、使い方を誤ると不自然な印象を与えるリスクもあります。本記事で解説したように、正確な敬語の知識に基づいた使い方を身につけることで、社内外のコミュニケーションがより円滑になるでしょう。
表現の選び方一つで、信頼や印象は大きく変わります。ぜひ今日から、「お待ちいたします」を状況に応じて使いこなし、ワンランク上のビジネスパーソンを目指してみてください。