「挨拶に代えさせていただきます」という表現は、ビジネスやフォーマルな文書、年賀状やお詫び状などで見られる慣用句です。本来あるべき形式的な挨拶を省略し、文章や一言でその代わりとすることを丁寧に伝える言葉です。特に文書の冒頭や結びに使われることが多く、適切に用いることで礼儀と簡潔さのバランスをとることができます。本記事では、「挨拶に代えさせていただきます」の意味、使い方、例文、注意点、言い換え表現などを詳しく解説します。

1. 「挨拶に代えさせていただきます」とは

1.1 意味

「挨拶に代えさせていただきます」とは、
「本来ならば直接ご挨拶申し上げるところですが、それに代えてこの文面で失礼いたします」
という丁寧な表現です。

この言い回しは、相手に失礼のないようにしつつ、あいさつを簡略化する意図が込められています。

1.2 使用の背景

ビジネスや公的なやりとりでは、季節の挨拶や対面のご挨拶が通例です。しかし、何らかの事情によりそれが難しい場合に、あいさつ文の一部または全部を「代える」という形で述べる際に使われます。

2. 使用される主な場面

2.1 年賀状・暑中見舞い・寒中見舞い

「本年もよろしくお願いいたします。略儀ながら、書中をもちまして新年のご挨拶に代えさせていただきます。」

2.2 結婚・出産・異動・退職などの報告

「私事で恐縮ですが、このたび〇〇に異動となりました。略儀ながら書中をもちましてご挨拶に代えさせていただきます。」

2.3 お詫び・連絡文書

「本来であれば直接ご説明すべきところ、書面にてご挨拶に代えさせていただきますことを何卒ご容赦ください。」

2.4 葬儀・弔事に関する通知

「略儀ながら、書中をもってご挨拶に代えさせていただきます。」

3. ビジネスメール・文書での例文

3.1 転勤・異動の挨拶

件名:異動のご報告
本文
〇〇様
いつも大変お世話になっております。
私事で恐縮ですが、このたび〇月〇日付で〇〇支社へ異動となりました。
本来であれば直接ご挨拶に伺うべきところではございますが、略儀ながら書中をもちましてご挨拶に代えさせていただきます。
今後とも変わらぬご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

3.2 弔電や訃報通知文

「突然のことでご連絡も遅くなりましたが、父〇〇が〇月〇日に永眠いたしました。
生前賜りましたご厚情に深く感謝申し上げます。
略儀ながら、書中をもってご挨拶に代えさせていただきます。」

3.3 お詫びの文章

「このたびはご迷惑をおかけいたしましたこと、深くお詫び申し上げます。
本来であれば直接お詫びに伺うべきところ、まずは書中をもちましてご挨拶に代えさせていただきます。」

4. 類似・言い換え表現

4.1 略儀ながら

「略式ではありますが」という意味で、非常に頻繁に「挨拶に代えさせていただきます」とセットで使われます。

例:「略儀ながら、書中をもってご挨拶申し上げます。」

4.2 書中をもちまして

書面でのご挨拶・連絡であることを丁寧に伝える表現。

例:「書中をもちまして新年のご挨拶とさせていただきます。」

4.3 まずはご報告まで

カジュアルな報告や連絡で、挨拶文の代わりになることもあります。

例:「まずはご報告まで。今後ともよろしくお願いいたします。」

4.4 失礼ながら

ややカジュアルな場面で、形式省略への前置きに使えます。

例:「失礼ながら、メールにてご挨拶申し上げます。」

5. 使用時の注意点

5.1 フォーマルな場に限って使う

「挨拶に代えさせていただきます」は丁寧である反面、あくまでも「儀礼を省略する言い訳」であり、カジュアルな日常連絡では使いません。結婚・退職・異動など、礼儀を要する文脈で使用しましょう。

5.2 実際の対面が可能なら使わない

本来は「会って挨拶すべきところを事情により書面で済ませる」という意味合いがあるため、相手と会える環境にありながら使うと失礼にあたる場合があります。

5.3 奉書的・格式張った印象を与えることも

やや硬い印象を持つため、若者向けのメールや社内チャットには不向きです。相手との関係性を考慮して使いましょう。

6. まとめ

「挨拶に代えさせていただきます」は、フォーマルな場面で相手への敬意を保ちながら挨拶を簡略化したいときに非常に有効な表現です。
転勤・退職・結婚・弔辞など、礼儀が求められるシーンにおいて、文面の中で丁寧さと簡潔さを両立させたい場面で使われます。
「略儀ながら」「書中をもって」などの慣用句と組み合わせながら、場面にふさわしい使い方を心がけることで、失礼なく思いを伝えることができます。

おすすめの記事