「申し使っております」は、謙譲語を用いた日本語表現で、上司や顧客など目上の人物の指示や命令を受けて、その内容を自分が実行していることをへりくだって表す言葉です。ビジネスシーンでは稀に使われるものの、誤用も多く、正確に理解しておくことが大切です。本記事では、「申し使っております」の意味、使い方、例文、言い換え表現、注意点について詳しく解説します。

1. 「申し使っております」の意味

1-1. 表現の構造

「申し使う」は、敬語の中でも謙譲語に分類され、「(目上の人に)命じられたことを自分が受けて実行する」という意味合いがあります。「申し使っております」はその進行形・継続形であり、「〜の指示を受けて実行しております」という意味になります。

1-2. 使用される立場と場面

この表現は、部下や後輩が、上司の命令を受けて動いていることを、顧客や取引先などの外部の相手に丁寧に伝えるときに使います。特に、社外の相手に対して、自分が話している内容や行動が、上司の意向によるものであることを伝えるときに適しています。

2. 実際の使い方と例文

2-1. 社外対応での基本例文

・部長の◯◯より申し使っております内容をお伝えいたします。
・本件につきましては、弊社代表の意向として申し使っております。
・ご説明に伺えとの指示を申し使っておりますので、本日お時間をいただければと存じます。

2-2. 電話や訪問時の例

・営業部長の山田より申し使って、本日はご挨拶に伺いました。
・弊社担当より申し使ってまいりました。資料をご覧いただけますでしょうか。

2-3. メール文中での使用例

・◯◯の件につきまして、上司より申し使っておりますとおり、ご報告申し上げます。
・課長の佐藤より申し使って、資料を送付させていただきます。ご確認のほどお願いいたします。

3. 言い換え表現とその違い

3-1. より一般的な表現

・指示を受けております
・ご命令を賜っております
・命じられております
・上司の意向でございます

3-2. 言い換え文例の比較

・部長より申し使っておりますので、本件につきましては〜
→ 部長の指示を受けておりますので、本件につきましては〜
→ 弊社内の意向として進めさせていただいております

3-3. 言い換え時の注意

「申し使っております」はやや格式ばった表現のため、普段のビジネスメールでは「指示を受けております」「上司より申し伝えられております」など、少しくだけた言い方に置き換えても問題ありません。

4. 使用時の注意点

4-1. 相手によって使い分ける

この表現は外部の相手に対して、自分が誰の命を受けて行動しているかを明確に伝えるものです。社内で用いると堅苦しさや不自然さが出る場合があるため、主に社外とのやり取りに限定したほうがよいでしょう。

4-2. 「申し上げる」と混同しない

「申し使っております」は「伝えられたことを実行している」の意味で、「申し上げます」は「お伝えいたします」という意味です。似ているようで意味がまったく異なるため、誤用に注意が必要です。

4-3. 言葉の古風さに配慮する

「申し使う」は現代の会話ではあまり一般的ではないため、形式ばった印象を与える可能性があります。状況に応じて、もう少し現代的な言い換えを使うのも一つの選択です。

5. よくある質問

5-1. 「申し使っております」は誰に対して使う?

基本的には社外の目上の相手に使います。自分が動いているのは、上司や組織の命によるものだと丁寧に示すときに適しています。

5-2. 「申し使いました」との違いは?

「申し使いました」は過去形で、すでに受けた命令を実行した後に使う表現です。一方、「申し使っております」は現在進行形や現在完了形として、今まさに行っていることや継続的な行動を意味します。

5-3. 会話で使うと堅すぎる?

状況によっては堅く聞こえるため、初対面の商談や文書上では適していますが、日常の電話や会話では「上司の指示を受けております」など、少し柔らかくしても十分丁寧です。

まとめ

「申し使っております」は、目上の人や組織からの命令や依頼を受けて、自分が動いていることを謙譲して伝える言葉です。主に社外とのやり取りで、自分の立場や行動の正当性を丁寧に説明する際に有効です。文脈に応じた柔らかい言い換えや、敬語の使い分けができるようにしておくことで、信頼感のあるビジネスコミュニケーションが可能になります。

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