アーンアウトとは、企業の合併・買収(M&A)において、買収対価の一部を一定の条件を満たした後に支払う仕組みのことです。企業間の取引でよく使用されるこの仕組みの詳細と、実際にどのように活用されているのかを解説します。

1. アーンアウトの基本概念

1-1. アーンアウトとは?

アーンアウトは、M&Aにおいて買収側と売却側が合意した売却条件の一つで、取引完了後の業績に基づいて支払われる追加の対価を指します。この仕組みは、買収後のパフォーマンスに関する不確実性を解消するために利用されます。具体的には、売却後に一定の業績目標を達成した場合に、売却側が追加で対価を受け取ることができます。

1-2. アーンアウトの基本的な構造

アーンアウトは、次の要素で構成されます:

- **目標業績指標**:通常、売上高や利益などの業績指標が設定されます。
- **支払い条件**:目標が達成された場合に支払われる追加金額やスケジュールが決まります。
- **支払期限**:通常、アーンアウトは一定期間内に達成されるべき業績に基づいて支払われます。

2. アーンアウトの目的とメリット

2-1. 買収側にとってのメリット

アーンアウトは、買収側にとって以下のようなメリットがあります:

- **リスクの分散**:買収後に業績が期待通りでない場合でも、全額支払いを避けることができます。
- **業績ベースの価格決定**:買収額が業績に基づいて調整されるため、公平な取引が可能です。

2-2. 売却側にとってのメリット

売却側のメリットとしては、以下の点が挙げられます:

- **高い買収対価**:業績達成後に支払われる対価により、当初の買収価格を上回る利益を得る可能性があります。
- **買収後の関与**:アーンアウトでは、売却側が買収後も一定期間関与することが求められることがあります。これにより、売却側は自身の企業の成長に貢献することができます。

3. アーンアウトの実際の計算方法

3-1. アーンアウトの計算式

アーンアウトの計算方法は、基本的には次のように業績指標をもとに計算されます:

アーンアウトの支払い額 = 設定された目標業績達成度 × 支払額
たとえば、業績目標が「売上高1億円以上」と設定されており、達成した売上高が1.2億円だった場合、その達成度に応じて計算される追加支払い額が決まります。

3-2. アーンアウト契約の設定例

例えば、企業Aが企業Bを買収する際、アーンアウト契約において以下の条件が設定されることがあります:

- **業績目標**:売上高1億円を達成
- **支払額**:売上高が1億円を達成した場合に追加で5000万円支払う
この場合、企業Bが目標を達成した場合、企業Aは追加で5000万円を支払います。

4. アーンアウトのデメリットとリスク

4-1. アーンアウトのデメリット

アーンアウトにはいくつかのデメリットやリスクがあります。例えば、目標達成が難しい場合、売却側が期待した金額を受け取れない可能性があります。また、買収側も業績達成に向けた圧力を受けることになります。

4-2. アーンアウトに関する法的リスク

アーンアウト契約が複雑であるため、契約書における不明確な条件や業績評価基準が後の争いの原因となることがあります。契約書を慎重に作成することが重要です。

5. アーンアウトの活用事例

5-1. 実際のM&A事例でのアーンアウト活用

実際に、アーンアウトがどのように活用されているのかを具体的なM&A事例を通じて理解することができます。たとえば、大手企業が新興企業を買収する際に、アーンアウトを設定し、一定の業績を達成した場合に追加で対価を支払う仕組みを採用することがあります。

5-2. アーンアウトの業種別利用例

業界によってアーンアウトの使用方法が異なることもあります。たとえば、IT業界やスタートアップ企業のM&Aでは、成長が速いため、将来的な業績に基づく追加対価が多く使われます。

6. アーンアウトを導入する際のポイント

6-1. アーンアウトを設定する際の注意点

アーンアウト契約を設定する際は、目標業績指標を明確にし、その達成基準を合意することが重要です。また、達成度の評価方法や支払期限を明確にしておく必要があります。

6-2. アーンアウトの交渉での戦略

アーンアウトの交渉では、双方が納得できる業績目標を設定し、公平な評価基準を設けることが求められます。交渉の際には、法律や税務面のアドバイザーを交えることも重要です。

7. まとめ

アーンアウトは、M&Aにおける買収対価の一部を業績に基づいて支払う仕組みです。買収側・売却側双方にとってメリットがある一方で、契約条件や業績達成に関するリスクも伴います。アーンアウトをうまく活用するためには、目標業績指標を明確にし、慎重に契約を交わすことが求められます。

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