「拝読させていただきました」という表現は、相手が書いた文章を読ませていただいた旨を敬意を込めて伝えるときに使われます。ビジネスメールや手紙など、フォーマルな場面で見かける機会が多い一方で、敬語が重複しているのではないかと疑問を持たれる方もいるかもしれません。本記事では、このフレーズの正しい使い方や注意点、具体的な例文を交えて詳しく解説します。
「拝読させていただきました」の基本的な意味
「拝読」は「読む」の謙譲語であり、「相手の文章をありがたく読ませていただく」気持ちを表す言葉です。「拝読させていただきました」は、そのうえで「読ませていただきました」のさらに丁寧な形にあたります。
ただし、日本語の敬語には「二重敬語」という概念があり、過剰に敬意表現を重ねると不自然になる場合があります。「拝読」と「させていただく」が両方とも謙譲表現であるため、気にする方も多い表現ですが、ビジネス文書やフォーマルなやり取りでは比較的よく使われています。
「拝読させていただきました」は二重敬語か
よく言われるように、「拝読させていただきました」は二重敬語ではないかと指摘されがちです。実際には、
- 「拝読」 自体が「読む」の謙譲表現
- 「~させていただきました」 も「自分の行為を丁重に伝える」謙譲表現
という二つの謙譲表現が重なっているため、「二重敬語」であるとみなす考え方も存在します。
しかしながら、ビジネスシーンや公式文書でも、相手への深い敬意を示すために「拝読させていただきました」が使われているケースは多くあります。厳密な文法上は「拝読しました」で十分敬意を表せますが、実際のビジネス現場ではより丁寧な表現として定着しています。
相手や状況によっては「拝読しました」「読ませていただきました」とするほうが自然な場合もあり、使い分ける意識が大切です。
ビジネスシーンでの使い方
1. 受領した資料や文書を読んだ報告をする場合
相手から送付された資料や文書をきちんと確認したことを丁寧に伝えたい場合に使えます。
例
「先日は貴重なレポートをご送付いただきありがとうございます。早速拝読させていただきましたところ、大変参考になるデータが多く、今後の業務に活かせそうです。」
2. 書籍や論文などを読んだ感想を述べる場合
相手が書いた本や論文、記事などを読んだ感想や謝意を伝えたいときに、あらたまった表現として使用できます。
例
「このたびは先生の新刊をお送りいただき、誠にありがとうございます。拝読させていただきましたところ、改めて多角的な視点からの分析に感銘を受けました。」
3. 上司や目上の方が執筆したメールへの返信
上司や目上の方から長文メールや方針に関するドキュメントを受け取ったとき、内容をきちんと確認したことを表すために用いることがあります。
例
「先ほどお送りいただきました企画書を拝読させていただきました。ご提案内容につきまして、早速社内で検討を進めたいと存じます。」
使うときの注意点
過度に敬語を重ねない
「拝読」自体が敬意を表す言葉であり、「させていただく」も謙譲を示す表現です。相手や場面によっては、「拝読しました」で十分に敬意が伝わることがあります。社内のフランクなやり取りなどでは、かしこまりすぎると逆にわざとらしい印象を与えることもあるので、距離感に応じて調整してください。
カジュアルな場面では避ける
友人同士や親しい間柄での文章には向きません。あくまでもビジネスや公式的な場面、目上の人へのメールや手紙などに限定して使うとよいでしょう。
読み手の好みや企業文化を考慮する
文法的な観点から「拝読させていただきました」を二重敬語と捉える人もいます。社風や読み手の好みによっては過剰表現だと感じられる場合もありますので、「拝読しました」にするなど柔軟に使い分けましょう。
また、文章中に何度も使用するとくどくなるため、同じメールや手紙で繰り返し使うのは避け、1度か2度に留めるのが無難です。
バリエーション別例文
「拝読しました」を使う例
「拝読させていただきました」は敬意の重複を感じるという声もあるため、よりシンプルにまとめたいときはこちらが適しています。
例
「先日はご報告書をお送りいただき、ありがとうございます。本日拝読しました。大変勉強になる内容で、早速チーム内で共有いたしました。」
「読ませていただきました」を使う例
ややフォーマルながらも、過度に敬語を重ねた印象を避けたいときに便利です。
例
「お忙しい中、詳細なマニュアルをご用意いただきありがとうございました。早速読ませていただきましたが、大変わかりやすく整理されています。」
補足表現を添える例
「内容に感銘を受けた」「非常に勉強になった」「ご教示いただき感謝している」など、読んだ感想や今後の活用法を補足するとさらに丁寧な印象になります。
例
「先ほどお送りいただきましたご研究資料、早速拝読させていただきました。非常に示唆に富んだ内容であり、大変勉強になりました。頂戴した情報を今後のプロジェクトにぜひ活かしてまいります。」
まとめ
「拝読させていただきました」は、相手の書いた文章を読んだことに感謝や敬意を込めて丁寧に伝える便利なフレーズです。ただし、厳密にいえば二重敬語とも捉えられ、相手によっては「拝読しました」だけで十分と感じることもあります。
大切なのは「本当に敬意を伝える必要がある相手か」「企業文化や相手の好みに合っているか」を見極めることです。過度な敬語表現はわざとらしく受け取られる場合もありますが、ビジネスや公式なやり取りであれば比較的受け入れられやすい表現です。
相手との距離感や文脈に応じて「拝読しました」「読ませていただきました」などのバリエーションを使い分けながら、よりスムーズで誠実なコミュニケーションを目指しましょう。