ビジネスシーンでは、相手の忙しさを慮りながら依頼やお願いをする場面がたびたびあります。そのときに便利なのが「ご多用のところ恐れ入りますが」という表現です。しかし、このフレーズを初めて使う人にとっては、どのような場面で使えばいいのか、ほかの言い回しとの違いは何なのか、気になるポイントも多いのではないでしょうか。本記事では、「ご多用のところ恐れ入りますが」の意味や正しい使い方、そして具体的なビジネス例文を紹介します。

「ご多用のところ恐れ入りますが」とは

「多用」は「忙しい」「用事が多い」という意味を持ちます。「ご多用のところ恐れ入りますが」は、「お忙しい中恐縮ですが」というニュアンスで相手に配慮を示しつつ、依頼やお願いをする表現です。「恐れ入りますが」という言葉を添えることで、より丁寧に敬意を込めて依頼できる形になります。

ビジネスメールや電話、直接の会話など、相手のスケジュールを思いやりつつ何かをお願いしたい際に使われることが多いです。なかでも上司や取引先、顧客などに使う場合は、失礼のない言い回しとして重宝されます。

「ご多用のところ恐れ入りますが」と「お忙しいところ恐縮ですが」の違い

「お忙しいところ恐縮ですが」とほぼ同じ意味合いで使われますが、「ご多用」という言葉を使うことで「予定が詰まっている」「仕事が立て込んでいる」状況をややフォーマルかつ柔らかなトーンで表現しているのが特徴です。
「お忙しいところ」は比較的会話でもよく登場する表現ですが、「ご多用」は文書や公式的な場面でよりかしこまった印象を与えたいときに向いているといえます。

ビジネスシーンでの使い方

依頼やお願いをする場合

「ご多用のところ恐れ入りますが」を使う主なケースは、相手に作業や確認をお願いしたいときです。自分がどうしても手伝ってもらいたいことがあるが、先方の忙しさも承知している、というニュアンスを込められます。

ご多用のところ恐れ入りますが、今週中に資料のご確認をお願いいたします。
ご多用のところ恐れ入りますが、下記のアンケートへのご回答を何卒よろしくお願いいたします。

スケジュール調整や打ち合わせの依頼

相手の都合を伺う際に「ご多用」と表現することで、忙しさを気遣っている姿勢を伝えられます。特に、上司や顧客に新たなミーティングや面談をお願いするときに便利です。

ご多用のところ恐れ入りますが、可能でしたら来週中にお打ち合わせのお時間をいただけますでしょうか。
ご多用のところ恐れ入りますが、以下の日時候補をご検討いただき、ご返信いただけますと幸いです。

お詫びや断りを含む連絡

何か問題が起きて連絡が必要になったり、急な依頼が生じたりした場合にも、「ご多用のところ恐れ入りますが」と一言添えることで、相手の忙しさを理解している姿勢を伝えつつ連絡できます。

ご多用のところ恐れ入りますが、急ぎの件のためご対応をお願いできませんでしょうか。
ご多用のところ恐れ入りますが、本日はお時間を作っていただき、誠にありがとうございます。

使うときの注意点

相手の忙しさを本当に配慮しているか

口先だけで「ご多用のところ」と伝えるのではなく、実際に相手が抱える業務の状況やスケジュールを可能な範囲で把握し、負担を減らせる選択肢を提示することが望ましいです。「配慮」を口にするのは簡単ですが、実際にはこちら側からのフォローや提案も合わせて提示できるとより好感度が高まります。

過度に使いすぎない

相手を気遣うフレーズとして便利ですが、多用しすぎると文章がくどく感じられる可能性があります。特にやり取りを連続して行う際は、同じ言葉の繰り返しを避け、「大変恐縮ですが」「ご繁忙中恐縮ですが」などの表現と使い分けるとよいでしょう。

誠意を具体的な行動で示す

口頭やメールで「ご多用のところ恐れ入りますが」と述べるだけではなく、相手の負担を実際に減らす工夫も大切です。例えば、必要な資料をまとめて提出したり、わかりやすい要点のみを先にお伝えしたりと、相手がスムーズに対応できるようサポートする姿勢を示しましょう。

ビジネスメール例文

会議調整の依頼

件名
来週の打ち合わせ日程について(株式会社〇〇 山田)

本文
〇〇株式会社 営業部 佐藤様

いつも大変お世話になっております。株式会社〇〇の山田です。
ご多用のところ恐れ入りますが、来週中に新製品のデザイン案についてお打ち合わせのお時間をいただければと考えております。ご都合のよい日時を以下の候補からご選択いただき、ご連絡をいただけますでしょうか。

8月3日 午後2時から4時
8月4日 午前10時から12時

もし上記日程が難しい場合は、ほかの候補をご提案いただけますと助かります。ご繁忙中恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。

株式会社〇〇 企画部 山田太郎
電話 000 0000 0000

資料確認の依頼

件名
新プロジェクト提案書のご確認のお願い(株式会社〇〇 企画部 山田)

本文
〇〇株式会社 企画部 各位

お疲れ様です。山田です。
ご多用のところ恐れ入りますが、新プロジェクトの提案書を添付しましたので、今週末までにご確認いただけますでしょうか。ご意見やご質問がございましたら遠慮なくお知らせください。
よろしくお願いいたします。

株式会社〇〇 企画部 山田太郎
内線1234

まとめ

「ご多用のところ恐れ入りますが」は、相手の忙しさに配慮する丁寧な敬語表現として、ビジネスシーンで幅広く活用されています。ミーティングの調整や業務の依頼、急ぎの要件に対するお願いなど、あらゆるコミュニケーションにおいて相手の負担を考えている姿勢を示せる言葉です。

しかし、このフレーズを使うだけではなく、具体的なフォローやタイミングの配慮があってこそ、誠意が相手に伝わります。失礼にならない範囲で適度に使い、相手を思いやる姿勢を示すことで、よりスムーズで信頼度の高いビジネスコミュニケーションを築くことができるでしょう。

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