ビジネスメールや会議などでよく耳にする「ご周知ください」という表現ですが、正しく使えているか気になる方も多いのではないでしょうか。似たような言い回しに「ご承知ください」「ご確認ください」などがあり、使い分けで迷うこともあるかもしれません。本記事では、「ご周知ください」の正しい意味や使い方、注意点などを分かりやすく解説します。円滑な社内外コミュニケーションを実現するために、ぜひ参考にしてみてください。
「ご周知ください」の意味
「ご周知ください」とは、読み方を「ごしゅうちください」とし、相手に対して「多くの人に知らせてください」「広く知れ渡るようにしてください」という旨を伝える敬語表現です。
周知とは「広く知れ渡らせること」を意味し、ビジネスシーンでは「この情報を共有してください」「関係者に伝えてください」といったニュアンスで使われます。
たとえば、社内の関係部署に方針を伝えるときや、顧客に新サービスやキャンペーンについて案内を周知させたいときに使われるケースが多いです。日常会話ではあまり耳にしない言い回しですが、ビジネスコミュニケーションにおいては頻出の表現といえるでしょう。
「ご周知ください」と「ご承知ください」の違い
ビジネスメールなどで、よく似た表現として「ご承知ください」も見かけます。
「ご承知ください」は「了承しておいてください」「把握しておいてください」という意味合いです。一方の「ご周知ください」は「周りの人にも知らせ、情報共有を行ってください」という意味合いであり、対象が自分だけではなく第三者や複数の人に及ぶ点が大きな違いです。
「社内での取り決め内容を関係部署に周知させる」場合は「ご周知ください」が適切ですし、「先日のご提案をご了承いただきたい」場合などは「ご承知ください」を使うのが自然でしょう。
ビジネスシーンでの使い方
「ご周知ください」というフレーズは、社内外で情報を広く伝達する必要がある場面で使われます。いずれにしても、「情報を共有する」という性質上、上から目線にならないようにする配慮や、相手の立場を尊重した言葉遣いが大切です。
社内での使用例
社内連絡や会議の議事録メールなどで、決定事項をほかの部署やチームに伝達してもらいたい場合などに「ご周知ください」が使われます。
例
このたびの新ルールにつきまして、関係部署の皆様にご周知ください。
次年度の人事異動について、○日までに各チームへご周知いただきますようお願いいたします。
社外での使用例
クライアントや協力会社、取引先など、複数の関係者に告知したいことがあるときにも用いられます。ただし「ご周知ください」は、ある程度こちらが主導的に情報展開をお願いするニュアンスが含まれるため、相手との関係性によっては別の表現を検討することも大切です。
例
来週実施されるイベントの詳細を、貴社のご担当者様にもご周知いただけますでしょうか。
システムメンテナンスの日程が変更となりましたので、お手数ですが関係者の方々へご周知くださいますようお願い申し上げます。
使用時の注意点
周知する相手をはっきりと明示する
「ご周知ください」を使う際は、誰に向けて情報を広めてもらいたいのかを明確に示すことが重要です。たとえば、「社内関係者」「ご担当部署」「取引先」など、対象範囲をきちんと記載しておくと、相手にとっても分かりやすい指示になります。
例
この新制度については、事務局や人事部にも忘れずにご周知ください。
今後のリリーススケジュールに関しては、担当者レベルで周知徹底をお願いいたします。
依頼の表現を柔らかくする
「ご周知ください」はビジネスでよく使う敬語表現ですが、そのまま使うと、やや命令的に聞こえる場合があります。特に社外や上司宛ての場合には、もう少しクッションを入れた柔らかい表現にすると丁寧です。
例
もし差し支えなければ、関係部門へご周知いただけますと幸いです。
お忙しいところ恐縮ですが、下記の情報を社内にご周知いただければ助かります。
頻繁に使いすぎない
「ご周知ください」を乱用すると、受け手が疲弊してしまい、伝達効率が落ちる恐れもあります。多くの情報を一括で周知してほしいときは、文章を整理し要点をまとめるなど、受け手が分かりやすい形に工夫することが重要です。誰に何をどこまで伝えるのかを明記し、読みやすさにも配慮しましょう。
「ご周知ください」以外の言い回し
状況によっては「ご周知ください」という表現が強く感じられる、またはフォーマルすぎると感じられる場合もあるため、別の表現に言い換えることも選択肢に入ります。特に相手との距離感や伝える内容の性質によって使い分けましょう。
周知徹底をお願いいたします
こちらも「周知」を使った表現ですが、「お願いいたします」を加えることで、依頼のニュアンスを少し強調しつつもやわらかい響きに調整できます。
例
新しいルールの施行について、社内全体で周知徹底をお願いいたします。
皆様への共有をお願いいたします
「周知」という言葉を使わず、「共有」というフレーズで伝える方法です。カジュアルな印象になるため、チーム内など親しいメンバーが相手の場合に向いています。
例
今回の決定事項につきまして、皆様への共有をよろしくお願いいたします。
お知らせいただけますと幸いです
クライアントなど、目上の相手に情報の展開をお願いするときに役立つ表現です。「もし差し支えなければ」というクッションを入れることで、より一層丁寧なニュアンスになります。
例
来月のキャンペーン概要について、関係者の方々にもお知らせいただけますと幸いです。
メールでの文例
社内連絡の例
件名
新規システム導入スケジュールのご案内
本文
総務部 各位
お疲れ様です。情報システム部の田中です。
来月より新たに導入されるシステムにつきまして、下記のとおりスケジュールが確定いたしましたのでご案内いたします。つきましては、各チームの皆様にもご周知いただけますようお願いいたします。ご質問や不明点がありましたら、お気軽にご連絡ください。
システム導入スケジュール概要
1 システムテスト期間 7月1日から7月7日
2 本番移行作業 7月8日から7月9日
3 新システム稼働開始 7月10日
以上、よろしくお願いいたします。
情報システム部 田中太郎
内線 1234
取引先への例
件名
展示会出展に関するお願い(株式会社○○)
本文
株式会社○○ 営業部 佐藤様
いつも大変お世話になっております。株式会社△△の山田と申します。
先日ご案内いたしました展示会の出展に関して、現時点の詳細情報をまとめましたので添付ファイルにてお送りします。誠に恐れ入りますが、社内の関係部署やご担当者様にもご周知いただけますと幸いです。
何かご不明点がございましたら、お気軽にご連絡ください。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
株式会社△△ 企画部 山田花子
電話番号 000 0000 0000
まとめ
「ご周知ください」は、「この情報を広く伝えてください」という意味を込めたビジネス表現です。社内外の関係者へ同じ内容を届けてもらいたいときに非常に便利ですが、使いすぎたり相手に押しつけるような印象を与えたりしないよう注意が必要です。
相手やシチュエーションによっては「周知徹底をお願いいたします」「皆様への共有をお願いいたします」「お知らせいただけますと幸いです」といった別のフレーズに言い換えることで、より自然で円滑なコミュニケーションを取ることができます。
「周知する範囲」「周知してほしい内容」「依頼の緊急度」などを明確にし、読み手がスムーズに行動しやすいよう配慮するのが、ビジネス文書やメールでの基本です。ぜひ本記事を参考に「ご周知ください」の正しい使い方をマスターし、情報伝達をより的確に行えるよう活用してみてください。