ビジネスシーンでよく耳にする「使わさせていただきます」という表現。一見丁寧に見えるこの言い回しですが、正しい使い方かどうか疑問に思ったことはありませんか?本記事では、この表現の意味や適切な使用シーン、注意点について詳しく解説します。言葉遣いに気を配るビジネスパーソンにとって、ぜひ知っておきたい内容です。

1. 「使わさせていただきます」とは?

1-1. 言葉の構成と意味

「使わさせていただきます」は、「使う」という動詞に尊敬語と謙譲語が重なった複合表現です。

「使う」:基本動詞
「~させていただく」:自分が行動をとることについて、相手の許可や恩恵を前提にして使う謙譲語的表現
つまり、「(相手の好意により)使うことを許していただいたので、その通りに行動する」という意味合いを持ちます。

1-2. 一見丁寧だが…

「使わさせていただきます」は、丁寧なようでいて、実は文法的に問題があると指摘されることもあります。特にビジネスメールやスピーチの場面で使う場合には注意が必要です。

2. 文法的には正しいのか?

2-1. 二重敬語の問題

「使わさせていただきます」は「使う」+「~させて」+「いただく」で構成されています。この「~させていただく」は、実は一部の専門家から「敬語の過剰表現(二重敬語)」とされ、正しくないとみなされることがあります。

たとえば:

「見させていただきます」
「行かさせていただきます」
これらは過剰な敬語表現として違和感を持たれることもあり、ビジネスにおいては好まれないことがあります。

2-2. 「ら抜き言葉」も混ざりやすい

「使わさせていただきます」を話し言葉で使うと、「使わせていただきます」と発音する人も少なくありません。「使わさせて」と「使わせて」の違いは微妙ですが、乱用すると「ら抜き言葉」と混同される恐れがあります。

3. 「使わせていただきます」との違い

3-1. 正しいのはどっち?

文法的に自然で適切なのは「使わせていただきます」です。「使わさせていただきます」は、「使う」という五段活用動詞の未然形「使わ」に「させていただきます」を付けたものですが、これは不自然な形とされています。

正:使わせていただきます
誤:使わさせていただきます(冗長表現)

3-2. 誤用が広がる理由

一部のテレビ番組やマスメディアでも誤用が流れてしまうことで、一般にも浸透してしまっている背景があります。若年層や新人社員が「丁寧に言おう」として、かえって間違った表現を使ってしまうのはこのためです。

4. ビジネスシーンでの適切な表現

4-1. 正しい使い方の例

「この資料を使わせていただきます」
「御社のロゴを資料内で使わせていただきます」
このように、「使わせていただきます」は相手の許可や好意を前提とした行為であることが明確であり、ビジネスでも通用する丁寧な言い方です。

4-2. 言い換えの選択肢

状況に応じて、以下のような表現に言い換えることも可能です。

「使用させていただきます」:より形式的で丁寧
「使います」:カジュアルで簡潔(社内・同僚向け)

5. 実際のメール例文

5-1. 使用許可を得た後の表現

件名:資料使用のご連絡

株式会社○○
営業部 ○○様

お世話になっております。株式会社△△の□□です。
先日ご提供いただきました資料につきまして、社内プレゼン資料にて使用させていただきたく存じます。
問題がございましたら、お手数ですがご連絡いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願い申し上げます。

5-2. 使用許可を求める場合

件名:資料使用のご相談

株式会社○○
広報部 ○○様

平素より大変お世話になっております。
御社が公開されている資料について、弊社セミナー資料にて使用させていただけますでしょうか。
出典元を明記し、御社のご意向に沿う形での活用を予定しております。
ご確認のほど、何卒よろしくお願い申し上げます。

6. よくある誤解と注意点

6-1. 「丁寧=正しい」ではない

日本語は敬語が複雑なため、「丁寧に言おうとするほど間違ってしまう」ことがあります。「使わさせていただきます」もその代表例です。言葉の正しさと丁寧さのバランスが求められます。

6-2. 上司や顧客に使う際の注意

相手に敬意を表したつもりでも、誤用によって「言葉遣いが雑」「基本ができていない」と捉えられるリスクがあります。特に年配のビジネスパーソンの前では、無理に複雑な表現を避け、自然で正しい日本語を心がけることが重要です。

7. まとめ:正しい敬語で信頼を築く

「使わさせていただきます」は、丁寧なようでいて実は誤用されやすい表現です。ビジネスにおいては「使わせていただきます」を使うのが自然で信頼につながります。日々のやりとりの中で正しい言葉を選ぶことは、相手への敬意を示すと同時に、自分自身の信頼性も高める行動です。誤った敬語が定着しないよう、今一度自分の言葉遣いを見直してみましょう。

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