夏越の祓(なごしのはらえ)などで目にする「茅の輪くぐり(ちのわくぐり)」は、日本の伝統的な神事のひとつです。本記事では「茅の輪くぐり」の正しい読み方、意味、由来、そして作法までをわかりやすく解説します。
1. 茅の輪くぐりの読み方
「茅の輪くぐり」は「ちのわくぐり」と読みます。 漢字の「茅」は「ち」と読み、ススキやチガヤなどの植物を指します。「輪」は「わ」、「くぐり」は「くぐること」を意味します。したがって「茅の輪くぐり」は、「チガヤなどで作られた輪をくぐる」という意味になります。
日本語の読み方としてはやや特殊で、「茅」を「かや」と読むこともありますが、神事の名称としては「ちのわくぐり」が正式です。
2. 茅の輪くぐりとは何か
2-1. 概要
茅の輪くぐりとは、神社で行われる「夏越の祓(なごしのはらえ)」という神事の一部で、参拝者が茅(チガヤ)で作られた大きな輪をくぐることで、半年間の穢れ(けがれ)や災厄を祓い、残りの半年の無病息災を願う行事です。
2-2. 行事の時期
主に6月30日に全国の神社で行われることが多く、一年の前半を無事に過ごせたことに感謝し、後半の健康と安全を祈る意味があります。一部の神社では12月にも行われ、「年越の祓」として実施されます。
2-3. 茅の輪の形と素材
茅の輪は、チガヤやススキなどの植物を束ねて大きな円形にしたものです。神社の鳥居の下や境内に設置され、人が通り抜けられるほどの大きさで作られます。この輪は生命力を象徴し、悪霊や病気を寄せつけない神聖なものとされています。
3. 茅の輪くぐりの由来と歴史
3-1. 起源となる伝説
茅の輪くぐりの起源は、古事記や日本書紀に登場する「蘇民将来(そみんしょうらい)」の伝説にさかのぼります。
あるとき、旅の途中のスサノオノミコト(素戔嗚尊)が宿を求めた際、裕福な弟の巨旦将来は断り、貧しい兄の蘇民将来が快くもてなしました。後にスサノオは報恩として、「茅の輪を腰につければ疫病を免れる」と教えました。これが茅の輪の起源とされます。
3-2. 古代からの信仰
この伝説をもとに、古代より「茅の輪」を身につける、またはくぐることで災厄を避ける風習が広まりました。平安時代には宮中行事としても取り入れられ、後に庶民にも浸透していきました。
3-3. 現代までの伝承
現在でも全国各地の神社で行われており、特に6月と12月の「大祓(おおはらえ)」の際には、多くの参拝者が茅の輪をくぐって心身の浄化を願います。
4. 茅の輪くぐりの作法と手順
4-1. 基本的な作法
茅の輪くぐりには決まったくぐり方があります。一般的な手順は次の通りです。 1. まず正面で一礼する 2. 左回りに一度くぐる 3. 次に右回りにくぐる 4. 最後にもう一度左回りにくぐり、合計3回くぐる 5. 最後に正面で一礼して祈願する
この「左・右・左」の順番で3回くぐることで、体の穢れを祓い清めるとされています。
4-2. 茅の輪をくぐる際の心構え
茅の輪をくぐる際は、単なる儀式としてではなく、「感謝」と「祈り」の気持ちを持つことが大切です。半年間の平穏に感謝し、残りの半年の健康と安全を祈りながらゆっくりとくぐると良いでしょう。
4-3. 神社ごとの違い
神社によって作法や順路が異なる場合もあります。案内板や巫女の説明に従って正しい方法で行うことが大切です。また、一部では「左→右→左→正面」と4回くぐる形式を採用している神社もあります。
5. 茅の輪くぐりの意味と信仰
5-1. 穢れを祓う意味
日本の神道では、日常生活の中で知らず知らずのうちに身につく「穢れ(けがれ)」を祓うことが大切とされています。茅の輪くぐりは、その穢れを自然の力によって清め、心身をリセットする行為とされています。
5-2. 健康と無病息災の祈り
チガヤには生命力が強く、再生の象徴とされています。そのため、茅の輪をくぐることで新たな力を得て、病気や災いを防ぐと信じられています。
5-3. 感謝と謙虚の象徴
茅の輪くぐりは、単に厄除けの儀式ではなく、自分の行いを振り返り、感謝の気持ちを新たにする機会でもあります。日常における謙虚さや思いやりの心を取り戻すきっかけともなる神事です。
6. 茅の輪くぐりに関連する言葉と行事
6-1. 夏越の祓(なごしのはらえ)
茅の輪くぐりは「夏越の祓」と深く関係しています。夏越の祓は、1年の前半の罪や穢れを祓う神事で、6月の末に全国の神社で行われます。
6-2. 年越の祓(としこしのはらえ)
夏越の祓に対して、12月に行われるのが「年越の祓」です。一年を締めくくる清めの儀式であり、茅の輪が再び登場することもあります。
6-3. 蘇民将来の護符
一部の神社では「蘇民将来子孫也(そみんしょうらいのしそんなり)」と書かれた護符を配布しています。これは、茅の輪伝説の起源である蘇民将来を称えるお守りです。
7. 茅の輪くぐりの現代的な意義
7-1. 心のリセット
現代では、茅の輪くぐりは単なる宗教行事ではなく、心を整える時間として捉えられています。忙しい日常の中で、自分と向き合い、感謝や反省の気持ちを持つきっかけとなります。
7-2. 観光と伝統文化の融合
多くの神社では観光行事としても注目され、訪れる人々が日本の伝統文化に触れる貴重な体験となっています。
7-3. 地域コミュニティの結びつき
茅の輪くぐりを通じて地域住民が集まり、助け合いや交流が生まれることもあります。古くから続く行事が、現代社会における人々の絆を強める役割も果たしています。
8. まとめ
茅の輪くぐり(ちのわくぐり)は、古代から続く日本の伝統的な神事で、無病息災や厄除けの意味を持ちます。正しい読み方は「ちのわくぐり」。6月や12月の大祓で行われ、穢れを祓い心を清める儀式として現代にも受け継がれています。歴史や作法を知ることで、より深くその意義を感じることができるでしょう。
