「うつつを抜かす」という言葉は、恋愛や趣味などに夢中になりすぎて、現実を忘れてしまう様子を表す表現です。少し古風な響きがありますが、今でも文学や日常会話で使われることがあります。この記事では、「うつつを抜かす」の意味、語源、使い方、類語などをわかりやすく解説します。

1. うつつを抜かすの意味

1-1. 基本的な意味

「うつつを抜かす」とは、ある物事や人に心を奪われて、現実を忘れるほど夢中になることを意味します。主に恋愛や趣味にのめり込む様子を表す際に使われ、「仕事も手につかないほど彼女にうつつを抜かしている」といった形で使われます。
つまり、「うつつを抜かす」は「心を奪われる」「熱中する」「我を忘れる」というニュアンスを持っています。ただし、単に熱中しているというより、「夢中になりすぎて他のことがおろそかになる」という否定的な含みがあるのが特徴です。

1-2. 現代語での位置づけ

現代ではやや古風な表現とされていますが、小説やドラマなどでは今でもよく使われます。また、「うつつを抜かす」という響きには、少し文学的で情緒的な雰囲気もあり、感情の深さを強調する効果があります。

2. 「うつつ」の意味と語源

2-1. 「うつつ」とは何か

「うつつ」は漢字で「現(うつつ)」と書き、「現実」「意識がはっきりしている状態」という意味を持ちます。夢や幻想の世界に対して、今ここにある現実を指す言葉です。
古語では、「うつつ」は「夢に対する現(うつつ)」という使われ方が一般的で、「夢かうつつか分からない」といった表現でも使われてきました。つまり、「うつつ」は「現実の意識」や「正気」といった意味を持っているのです。

2-2. 「抜かす」の意味

「抜かす」は、「抜ける」「失う」といった意味を持つ動詞「抜く」が変化した言葉です。したがって、「うつつを抜かす」は直訳すると「現実(正気)を失う」という意味になります。
つまり、本来の語源的な意味は「正気を失うほど夢中になる」ということ。これが転じて、「恋愛や何かに心を奪われる」という意味で使われるようになりました。

3. うつつを抜かすの使い方

3-1. 一般的な使い方

「うつつを抜かす」は、誰かや何かに熱中しすぎている様子を、やや批判的または揶揄するように表す言葉です。
例文:
・彼は最近アイドルにうつつを抜かして、仕事が手につかないようだ。
・試験前なのに、ゲームにうつつを抜かしている場合じゃない。
・彼女は恋人にうつつを抜かして、友達付き合いをおろそかにしている。
このように、「うつつを抜かす」は「夢中になりすぎることへの注意喚起」の意味を含んでいます。

3-2. 恋愛で使われる場合

特に恋愛に関して、「うつつを抜かす」はよく使われます。
例文:
・彼はあの人にうつつを抜かしている。
・恋にうつつを抜かして、現実が見えなくなっている。
恋愛に盲目になっている様子や、冷静さを失っている状態を表すのに適しています。

3-3. 趣味や娯楽に使われる場合

恋愛以外にも、趣味・娯楽などへの過度な没頭を表すこともあります。
例文:
・最近はスマホゲームにうつつを抜かしている人が多い。
・彼は投資にうつつを抜かして、家庭を顧みなくなった。
このように、恋愛に限らず「現実を忘れるほど熱中する」場合に広く使える表現です。

4. うつつを抜かすの類語・言い換え表現

4-1. 類語一覧

「うつつを抜かす」と同じような意味を持つ表現には、次のようなものがあります。
・心を奪われる
・夢中になる
・のぼせる
・熱を上げる
・溺れる
・はまる
これらはすべて「何かに熱中する」という共通点を持っていますが、ニュアンスが少しずつ異なります。

4-2. 言い換えの使い分け

たとえば、「夢中になる」は中立的な表現で、良い意味でも悪い意味でも使えます。一方、「うつつを抜かす」や「のぼせる」「溺れる」は、やや否定的・批判的な響きを持ちます。
・ポジティブな言い換え:「夢中になる」「情熱を注ぐ」
・ネガティブな言い換え:「うつつを抜かす」「のぼせ上がる」「心を奪われる」
使う場面や文体によって、適切な言い換えを選ぶことが大切です。

5. 「うつつを抜かす」が使われる文学的表現

5-1. 古典文学での登場

「うつつを抜かす」という表現は、古典文学でもしばしば見られます。『源氏物語』や『伊勢物語』など、恋愛を主題とした作品では、登場人物が恋に夢中になる様子を「うつつを抜かす」と表現することがあります。
たとえば、「あの人を思うあまり、うつつを抜かしける」など、恋の切なさや狂おしさを描く際に用いられてきました。

5-2. 近代文学・現代表現での使用

近代文学や現代小説でも、「うつつを抜かす」は詩的な響きを持つ表現として使われています。特に恋愛描写や、心を惑わす感情の表現として重宝されます。
例:「彼女の笑顔にうつつを抜かして、何も見えなくなった。」
このように、文学的・感情的な文章を豊かにする言葉として今も活躍しています。

6. 「うつつを抜かす」を使う際の注意点

6-1. 目上の人やフォーマルな場では避ける

「うつつを抜かす」は少し古風で感情的な表現のため、ビジネスメールやフォーマルな文書では不向きです。代わりに「熱中する」「関心を寄せる」といった表現を使うのが無難です。

6-2. 相手を批判するように使う場合に注意

「うつつを抜かしている」という言い方は、相手を軽く見たり、非難するような響きを持つことがあります。そのため、使う相手や場面には注意が必要です。冗談や文学的な文脈で使うのが適しています。

7. まとめ:「うつつを抜かす」は現実を忘れるほど夢中になること

「うつつを抜かす」とは、「現実を忘れるほど何かに夢中になる」「正気を失うほど心を奪われる」という意味の言葉です。語源的には「うつつ=現実」「抜かす=失う」から来ており、恋愛や趣味に没頭しすぎる様子を表す表現として使われてきました。
現代では少し古風ながらも、文学的で感情のこもった言葉として生き続けています。恋に落ちる瞬間や、何かに熱中する心情を表す際に、「うつつを抜かす」は非常に味わい深い日本語と言えるでしょう。

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