「舎利殿(しゃりでん)」という言葉は、寺院や仏教建築に関する文脈で登場します。京都の「金閣寺(鹿苑寺)舎利殿」などが有名ですが、そもそも「舎利」とは何を意味し、「舎利殿」はどんな役割を持つ建物なのでしょうか。この記事では、「舎利殿」の意味や語源、建築としての特徴をわかりやすく解説します。

1. 「舎利殿」とは何か

「舎利殿」とは、仏舎利(ぶっしゃり)を安置する建物のことです。仏舎利とは、釈迦(お釈迦さま)が亡くなった後に残った遺骨や遺灰を指します。つまり、舎利殿は仏教における最も神聖な象徴を納めた聖なる殿堂です。

語を分解すると、

  • 舎利(しゃり)=釈迦の遺骨・遺灰
  • 殿(でん)=建物・堂・宮殿

この二つが合わさり、「舎利殿」とは「釈迦の遺骨を納める堂(建物)」という意味になります。

(例)

  • 鹿苑寺(金閣寺)舎利殿
  • 慈照寺(銀閣寺)舎利殿
  • 宋や元時代の仏教建築にも舎利殿が存在

2. 「舎利」とは何か

「舎利」はサンスクリット語の「śarīra(シャリラ)」を音写した言葉で、仏陀の遺骨を意味します。釈迦の火葬後に遺骨が八つに分けられ、各地の王たちに配分されたという伝承があります。これが後に仏舎利塔(ストゥーパ)を建てる風習へとつながりました。

その流れの中で、中国・日本では仏舎利を安置するための堂宇(建物)が建てられ、「舎利殿」と呼ばれるようになったのです。

3. 「舎利殿」と「仏舎利塔」の違い

「舎利殿」と「仏舎利塔(ストゥーパ)」はどちらも仏舎利を納めるための建造物ですが、形態や目的が異なります。

名称 形状 目的・特徴
仏舎利塔 塔の形(五重塔・ストゥーパなど) 仏舎利を埋めて供養する建造物
舎利殿 堂の形(殿堂建築) 仏舎利を安置・礼拝するための建物

つまり、「舎利殿」は建築物としての堂(建物)であり、「仏舎利塔」は塔としての供養施設です。

4. 舎利殿の建築的特徴

舎利殿は、仏舎利を安置するために特別な形式と意匠をもつ建物です。日本では、室町時代以降、金閣寺・銀閣寺の舎利殿が特に有名です。

代表的な舎利殿の特徴:

  • 上層に仏舎利を安置する。
  • 建物全体が装飾的で、金箔や漆などで荘厳に仕上げられる。
  • 宗派や時代によって、禅宗・浄土宗・天台宗などの様式が反映される。

金閣寺(鹿苑寺)舎利殿では、上層に仏舎利を安置し、外観が金箔で覆われている点が象徴的です。

5. 有名な舎利殿の例

5-1. 鹿苑寺(金閣寺)舎利殿(京都)

室町幕府3代将軍・足利義満が建立した建物で、上層に釈迦の舎利を安置していることから「舎利殿」と呼ばれます。三層構造で、上層ほど仏教的・象徴的な造りになっています。

5-2. 慈照寺(銀閣寺)舎利殿(京都)

足利義政によって建立された建物で、金閣寺に倣って建てられました。外観は質素ですが、精神性を重んじた禅の美が表現されています。

6. 「舎利殿」が持つ象徴的な意味

舎利殿は単なる建物ではなく、釈迦への信仰の象徴です。仏舎利を安置することにより、そこは釈迦そのものが存在する聖地とみなされました。そのため、舎利殿を中心に寺院全体が構成されることもあります。

また、日本では「金閣寺舎利殿」のように、宗教的役割とともに芸術・文化の象徴としての意味も持つようになりました。

7. まとめ

「舎利殿(しゃりでん)」とは、釈迦の遺骨=仏舎利を安置するための堂(建物)を指します。仏教において最も尊い存在を納める聖なる空間であり、日本では金閣寺や銀閣寺の舎利殿がその代表例です。単なる建築物ではなく、信仰と芸術が融合した象徴的な存在として、今も多くの人々を惹きつけています。

おすすめの記事