業務報告書やメール、プレゼン資料など、さまざまなビジネスシーンで頻繁に使われる「実施」という言葉。しかし、繰り返し使うことで文章が単調になったり、適切な表現ではないと感じたりすることもあります。この記事では、「実施」の自然な言い換え表現を、使用場面ごとに詳しく解説します。
1. 「実施」の意味と使用場面
「実施」とは、計画や方針などを現実に行動に移すことを指します。つまり、何かを実行に移すという意味合いで、非常に幅広いシーンで使われています。
たとえば、以下のような表現で使われることが多いです。
アンケートを実施する
対策を実施する
研修を実施する
調査を実施する
非常に汎用性が高い反面、文章内で何度も登場するとくどく感じられるため、適切な言い換えが求められます。
2. 「実施」の言い換え表現とそのニュアンス
2-1. 「行う」:もっとも基本的な言い換え
「行う」は、「実施」とほぼ同義で使える基本表現です。堅すぎず、一般的な文書にもなじみます。
例:
アンケートを実施する → アンケートを行う
計画を実施する → 計画を行う
2-2. 「実行する」:意思や計画を強調したいとき
「実行する」は、特定の方針や目標に沿って行動を起こす場合に適しています。「決断して進める」というニュアンスが強まります。
例:
対策を実施する → 対策を実行する
新制度を実施する → 新制度を実行する
2-3. 「遂行する」:任務や業務に適したフォーマル表現
「遂行する」は、公的な業務や職務に関連する表現として使われます。書面や契約書などで見られる表現です。
例:
任務を実施する → 任務を遂行する
業務を実施する → 業務を遂行する
2-4. 「取り組む」:進行中の活動に使いやすい
「取り組む」は、課題や問題に対して主体的に向き合っていることを示す表現で、やや柔らかい印象を与えます。
例:
改善策を実施する → 改善策に取り組む
働き方改革を実施する → 働き方改革に取り組む
2-5. 「実行に移す」:計画段階から行動への移行を表す
この表現は、計画や構想を実際に動かすフェーズで使われます。「実施」よりも少し動的な印象です。
例:
対応策を実施する → 対応策を実行に移す
2-6. 「実現する」:成果や結果を重視する場合
「実現する」は、目標やビジョンなどが形になったことを意味します。成果や結果を伴う文脈で使われることが多いです。
例:
計画を実施する → 計画を実現する
2-7. 「施行する」:制度や法律の文脈で使われる
「施行する」は、法律や条例、制度などが正式に始まることを意味します。法的な文脈で使われます。
例:
新制度を実施する → 新制度を施行する
2-8. 「展開する」:活動の広がりを表現
「展開する」は、イベントやキャンペーン、マーケティング活動などで使われる表現です。「広がり」や「展開力」を表します。
例:
プロジェクトを実施する → プロジェクトを展開する
2-9. 「開始する」:新たに始めることを明示
特定の事業や取り組みを新たに始める際、「開始する」という表現は明確かつ簡潔です。
例:
実証実験を実施する → 実証実験を開始する
2-10. 「導入する」:新たな仕組みや制度に適する
「導入する」は、新しい制度や機器、仕組みを取り入れる場面で適切な表現です。
例:
新システムを実施する → 新システムを導入する
3. シーン別「実施」の言い換え例
3-1. ビジネス文書や報告書で
ビジネス文書では、「実施」ばかりを使わず、以下のように場面に応じて言い換えることで、文章の格調が上がります。
例:
改善策の実施 → 改善策への取り組み
研修の実施 → 研修の実行/研修の開催
3-2. メールや会話で
柔らかく、わかりやすい言葉を選びたい場面では、以下のような言い換えが自然です。
例:
イベントの実施 → イベントの開催
面談の実施 → 面談を行う
3-3. プレゼンや提案資料で
聞き手にアクションを促したいときには、動的な印象のある言葉を用いると効果的です。
例:
新規施策の実施 → 新規施策の展開
試験運用の実施 → 試験運用の開始
4. 「実施」の言い換えで注意したいポイント
言い換え表現は便利ですが、使い方を誤ると意味が変わってしまう場合もあります。以下の点に注意しましょう。
法的・制度的な文脈では「施行」や「導入」が適切
実施が行動であるのに対し、「実現」は結果を指す
「遂行」や「展開」は文語調であり、口語では堅すぎる印象になることも
場面に応じて、表現のトーンや意味をしっかり理解して選ぶことが大切です。
5. まとめ:表現の幅を広げて伝える力を高めよう
「実施」という言葉は非常に便利ですが、使い方が単調になると説得力が下がることもあります。言い換え表現を適切に選ぶことで、文章や会話に深みや説得力を持たせることができます。状況に応じた表現の工夫が、相手に伝わる言葉選びの第一歩となります。