ビジネス文書や行政文書で見かけることの多い「所掌(しょしょう)」という言葉。意味をなんとなく理解していても、正しく使いこなせている人は意外と少ないかもしれません。本記事では、「所掌」のビジネス用語としての使い方や、「所管」との違い、所掌範囲・所掌事務といった関連表現まで詳しく解説します。
1. 所掌(しょしょう)とは?ビジネス用語としての意味
1-1. 所掌の読み方と基本的な意味
「所掌(しょしょう)」は、漢字で「所」=場所や範囲、「掌」=つかさどる・管理する、という意味から成り立っており、「自分の担当する職務や業務の範囲」を指す言葉です。
つまり、ビジネス用語としての「所掌」とは、「ある人物や部門が責任を持って担当する業務範囲」を意味します。
1-2. 所掌が使われる場面
「所掌」は、次のような場面で使われます。
・役職ごとの業務分担の説明
・官公庁の職務記述書や法令文書
・社内規定や部署間調整の文書
例文:
・当課の所掌事項についてご説明いたします。
・これは経理部の所掌範囲外の業務です。
このように、ビジネス文書や公的文書で頻出する専門的な用語です。
2. 所掌の使い方【ビジネス文書・会話例つき】
2-1. ビジネスメールや文書での使い方
・本件は貴部署の所掌範囲と認識しておりますので、ご対応のほどよろしくお願いいたします。
・新規プロジェクトの運営については、総務部の所掌となります。
・各課の所掌事項を明文化することで、責任の所在が明確になります。
このように、業務の割り振りや責任範囲を明確にするときに使われます。
2-2. 会話の中での使い方(少し硬めの表現)
「それは当課の所掌に属する業務ですので、対応いたします。」
「その部分は他部署の所掌になりますので、引き継ぎさせていただきます。」
会話の中でもややフォーマルな場面や上司への説明などで使用されます。
3. 所掌範囲・所掌事務とは?関連用語を解説
3-1. 所掌範囲とは
「所掌範囲」とは、「その人・部署が責任を持って対応すべき業務の範囲」です。
具体的には次のように使います。
例文:
・その件は、当部署の所掌範囲に含まれません。
・災害時の対応について、所掌範囲を明確にしておく必要があります。
ビジネスや行政文書で、業務の境界線をはっきりさせたいときに使われます。
3-2. 所掌事務とは
「所掌事務」とは、法律や行政規定の中で使われる用語で、「特定の機関や役職が取り扱うと定められた事務」のことを指します。
例:
・厚生労働省の所掌事務には、雇用保険制度の運用が含まれます。
・この法令に基づく所掌事務については、総務省が管轄します。
「所掌事務」という言葉は、主に法律や公文書で使われ、業務の範囲や責任の所在を制度的に定義するときに使われます。
4. 「所掌」と「所管」の違いを明確に理解しよう
4-1. 「所掌」と「所管」はどう違う?
「所掌」と「所管」は似た場面で使われますが、以下の違いがあります。
・所掌:業務や職務そのものを担当する
・所管:法律や制度、事業などの監督・管理権限を持つ
つまり、「所掌」は業務レベルでの担当範囲を指し、「所管」はより上位の視点で管理する立場を表します。
4-2. 所掌と所管の使い分け例
・厚生労働省が所管する法律
・市役所福祉課が所掌する福祉サービス
このように、「所管」は管轄権のある上位組織が用いることが多く、「所掌」は実務を担う部門・人物に使われます。
4-3. ビジネスでの混同に注意
ビジネスシーンでは、「これはどちらの所管ですか?」と使いたくなる場面がありますが、実際には「所掌」のほうが適切な場合が多いです。
NG:この業務の所管はどこですか?
OK:この業務の所掌部署はどこですか?
このように正確に使い分けることで、信頼性の高い文書作成が可能になります。
5. 所掌の言い換え表現と柔らかい言い回し
5-1. 所掌の言い換え一覧
ビジネスシーンに応じて、次のような表現に言い換えることができます。
・担当
・担当業務
・担当範囲
・役割分担
・業務分掌
・責任範囲
5-2. 柔らかく言いたいときの言い換え例
・「弊社の所掌となります」→「弊社が担当させていただきます」
・「その業務は当部署の所掌外です」→「その件は別の部署が対応しております」
場面に応じて言葉を調整することで、相手への印象を柔らかくすることが可能です。
6. 所掌の使用上の注意点とビジネスマナー
6-1. 適切な場面で使う
「所掌」はフォーマルな表現であるため、カジュアルな会話やメールでは使いすぎないように注意が必要です。特に、初対面の相手や、フランクな関係性の場合は「担当」などの言い換えを用いるとよいでしょう。
6-2. 所掌範囲の明確化は組織運営の鍵
部署やプロジェクトチーム内で所掌範囲が曖昧だと、責任の所在が不明確になり、業務の重複や漏れが発生します。組織として明確にルール化しておくことで、スムーズな運営が実現します。
7. 【まとめ】所掌を理解して、正確な業務分担と文書作成を
「所掌(しょしょう)」というビジネス用語は、やや堅苦しい表現ではありますが、業務範囲や責任の明確化に非常に有効な言葉です。
「所掌範囲」「所掌事務とは」といった表現を正しく使いこなすことで、社内の混乱を防ぎ、信頼性の高い文書や説明が可能になります。
また、「所管」との違いや言い換えも理解し、状況に応じて適切に使い分けることで、ビジネスパーソンとしての表現力が高まります。
日常の業務においても、所掌という言葉を活用し、業務効率の向上を図りましょう。