「母線(ぼせん)」という言葉は、数学・製図・電気工学などの分野で登場します。
一見同じ言葉でも、分野によって意味が少しずつ異なります。
この記事では、「母線」の基本的な意味と、数学・物理・電気分野それぞれでの使われ方をわかりやすく解説します。

1. 「母線」とは?

「母線(ぼせん)」とは、もともと図形や立体を作るときの基準となる線を意味します。
漢字の通り、「母(おや)」のように他の線や形の元となる線というニュアンスです。

母線(ぼせん):立体を作るもとになる線。また、電気系統において電力を供給する主要な導線。
(出典:広辞苑)

つまり、「母線」という言葉は立体の基準線または電気の幹線を指します。
どちらの分野でも、「中心的な役割を果たす線」という共通点があります。

2. 数学・幾何学における「母線」

数学(特に立体幾何)では、「母線」は立体を構成する基準となる線のことです。
円柱や円すいなどの回転体の定義に使われます。

  • 円柱の母線:円柱の側面を作る、底面の円周上の一点を結ぶ平行な線。
  • 円すいの母線:頂点と底面円周上の各点を結ぶ線。

例えば、円すいを作るときに、底面の円周上の点を頂点に結んでいくと、
その線の集合が円すいの側面になります。
この「頂点から底面までの線」が母線です。

円すいの母線 図
▲ 円すいの頂点Aと底面上の点Bを結ぶ線ABが母線。

同様に、円柱では上下の円を結ぶ平行な線が母線です。

例:

  • 円すいの母線の長さは、底面半径と高さを使って計算できる。
  • 円柱の母線は、底面に垂直な直線である。

3. 電気工学における「母線」

電気の分野では、「母線」は電力を分配・集約する主要な導線(幹線)を意味します。
英語では「bus」「busbar(バスバー)」と呼ばれます。

母線(ぼせん):発電所・変電所などで、複数の回路を接続し電力を分配する主要な導体。
(出典:電気学会用語集)

つまり、母線は電気システムの“心臓部”にあたる部分であり、
発電機・変圧器・配電線などをつなぐ中心的な導体です。

例:

  • 発電所の母線に複数の送電線が接続されている。
  • 配電盤の母線を点検する。
  • 母線電圧が安定しているか確認する。

このように、母線は電気の流れをまとめる「主幹線」として重要な役割を果たしています。

4. 設計・製図における「母線」

製図や機械設計では、母線は立体の輪郭を構成する基準線を指します。
例えば、回転体を図面上で描くときに、母線を回転させることで立体の形状を表現します。

  • 旋盤加工の設計では、母線を基準に形状を作成する。
  • 3D CADでは、母線(ガイドライン)を指定して回転体を生成する。

このように、設計分野でも「母線」は形の基本となる線という意味で使われます。

5. 「母線」と「母体」「基線」との違い

用語 意味 使われる分野
母線 基準となる線・電力の幹線 数学・電気・設計
母体 基礎・もととなるもの 組織・生物・社会学
基線 測量や図形の基準となる線 幾何・測量・グラフ

いずれも「基礎・中心」を意味しますが、
「母線」は特に形やエネルギーの中心となる“線”に使われる点が特徴です。

6. 英語での「母線」表現

分野 英語表現 例文
数学・幾何 generatrix / generator The generatrix of a cone is the line connecting the apex and the base.(円すいの母線は頂点と底面を結ぶ線である。)
電気工学 bus / busbar The main busbar connects the generator to the transformer.(母線は発電機と変圧器をつなぐ主幹線である。)
設計・製図 generator line The shape is formed by rotating the generator line.(その形は母線を回転させて形成される。)

7. まとめ

「母線(ぼせん)」とは、基準となる線という共通の意味を持ちながら、
分野によって次のように使い分けられます。

  • 数学・幾何:立体を構成する線(例:円すい・円柱の母線)
  • 電気工学:電力を集約・分配する主幹線(busbar)
  • 製図・設計:形のもとになる線(回転体など)

どの分野でも、「母線」は全体を支える“中心的な線”という役割を持っています。
そのため、「形・電力・設計」をつなぐ重要な基盤を意味する言葉なのです。

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