「承前(しょうぜん)」とは、前の内容を受けて話を続けることを意味する言葉です。ビジネス文書や報告書、論文などでよく使われますが、使い方を誤ると文章が不自然になります。本記事では、「承前」の正しい意味や使い方、具体例、類語との違いまで詳しく解説します。
1. 承前とは何か
「承前」とは、文字通り「前を承ける(うける)」という意味を持ち、「前回述べた内容を踏まえて」「これまでの話を引き継いで」というニュアンスで使われる言葉です。主に書き言葉として使用され、日常会話ではあまり登場しません。
1-1. 漢字の意味
「承」は「受け継ぐ」「受け取る」という意味、「前」は「以前」や「前の内容」を表します。つまり、「承前」は「前のことを受けて次に進む」という構造的な意味を持っています。
1-2. 一般的な使い方
ビジネス文書、報告書、学術論文などで「承前〜」という形で用いられます。たとえば、「承前、次の方針を提示する」「承前の計画に基づき実施した」といった表現です。これは、前回や前述の内容を受けて新たな情報を展開する際に使うものです。
1-3. 日常的な文脈での使用
日常会話で使われることは少ないものの、ビジネスや公的な文書では重宝されます。例えば会議記録や報告メールで「承前の件についてご報告いたします」といえば、「以前お話しした件について」という意味になります。
2. 承前の使い方と例文
承前を正しく使うためには、文脈と目的に応じた使い方を理解することが重要です。以下に実際の使用例を紹介します。
2-1. ビジネスメールでの使い方
例文:「承前の案件につきまして、進捗状況をご報告いたします。」 この場合、「以前お伝えした案件について」という意味になります。前回のやり取りを受けて、最新の情報を報告する際に使われる表現です。
2-2. 会議資料や報告書での使い方
例文:「承前の計画に基づき、以下の施策を実施しました。」 このように、過去の計画や方針を継続している場合に用います。文章の流れを自然に保ち、読者に「前回とのつながり」を示す役割があります。
2-3. 公文書・官僚文書での使い方
例文:「承前、第2次計画を策定する。」 行政文書などでは「承前」を使うことで形式的な文章の統一感が生まれます。「続いて」「前に続けて」という意味を持ち、文書の論理性を保ちます。
3. 承前の具体的な使用シーン
承前は特定の分野でよく使われる専門的な言葉でもあります。どのような場面で用いられるのかを確認しておきましょう。
3-1. ビジネス文書
業務報告、会議資料、取引先への連絡などでよく使われます。 例:「承前の件ですが、来週の会議にて正式に決定予定です。」 このように「承前」は文章に品位を与え、プロフェッショナルな印象を与える表現です。
3-2. 学術・論文
学術論文では、先行研究や前章の内容を踏まえて新しい考察を展開する際に使われます。 例:「承前の研究を発展させ、さらに新しい視点を導入した。」 「承前」は学問的な文体に適しており、文章に一貫性を持たせるのに役立ちます。
3-3. 小説や評論などの文芸作品
文学的文脈でも、「承前」は構成上のつなぎとして使われることがあります。 例:「承前、本章では彼の内面の変化を描く。」 このように使うことで、論理の流れが読みやすく、知的な印象を与えます。
4. 承前の類語と違い
「承前」と似た意味を持つ表現は多くありますが、それぞれ微妙にニュアンスが異なります。
4-1. 「前回に引き続き」との違い
「前回に引き続き」は口語的で、日常的な会話やカジュアルな文書に向いています。 一方、「承前」は正式で硬い表現であり、ビジネスや学術の場に適しています。
4-2. 「続いて」との違い
「続いて」は単に次に進むことを表しますが、「承前」は「前の内容を受けて展開する」という意味を含みます。前後の論理的なつながりを意識する点が異なります。
4-3. 「前述のとおり」との違い
「前述のとおり」は同じ文書内で前に書いた内容を指す場合に使われます。「承前」は文書をまたいでも使えるのが特徴で、継続した話題に適しています。
5. 承前を使うときの注意点
承前は便利な言葉ですが、誤用すると不自然な印象を与えることがあります。正しい使い方を理解しておきましょう。
5-1. 話し言葉には不向き
「承前」は書き言葉であり、口頭で使うと堅苦しくなります。会話では「前回の件」など、より自然な表現を使いましょう。
5-2. 文頭で使うのが基本
多くの場合、「承前、〜」という形で文頭に置きます。文中で使うと意味が伝わりにくくなるため注意が必要です。
5-3. 前回の内容が明確であること
「承前」は前に話した内容を受ける言葉なので、前提が明確でなければ意味が通じません。読者が理解できるよう、文脈を整えておくことが大切です。
6. 承前の英語表現
英語では「承前」に完全に一致する単語はありませんが、状況に応じて次のような表現が使われます。
6-1. following the previous
直訳に近い表現で、「前回に続いて」という意味になります。 例:"Following the previous discussion, we made a new proposal."(前回の議論を踏まえて、新たな提案を行った。)
6-2. based on the previous
「前回の内容に基づいて」というニュアンスを持ち、ビジネス文書にも適しています。 例:"Based on the previous report, the following results were obtained."
6-3. as mentioned before
「前述のように」という自然な表現で、軽い文体に向いています。論文やビジネスメールでも使いやすい言い回しです。
7. 承前を効果的に使うコツ
承前はフォーマルな場面で文章を整理し、読み手に分かりやすく伝えるための便利な表現です。
7-1. 文書に一貫性を持たせる
「承前」を使うことで、文書全体に連続性が生まれます。特に長期的なプロジェクト報告や定期レポートでは、前回との関連を明確にできるため効果的です。
7-2. 情報の流れを明確にする
新しい情報を提示する前に「承前」を置くことで、読者は「ここからは前の内容の続きだ」と理解しやすくなります。
7-3. 過剰使用を避ける
便利な言葉ではありますが、同じ文書内で何度も使うと単調になります。「前回に引き続き」「前述の件」などと使い分けましょう。
8. まとめ:承前は論理的な文章を支える接続表現
「承前」とは、前回や前述の内容を受けて新たな話を展開する際に使われるフォーマルな表現です。主にビジネス文書や報告書、論文で使われ、文章の流れを滑らかにし、読み手に連続性を意識させます。正しい使い方を身につければ、文書の完成度と説得力を高めることができます。
