「勘当(かんどう)」という言葉は、時代劇や古い小説などでよく耳にします。「親に勘当される」「家を勘当する」といった表現には、重々しい響きがあります。現代ではあまり使われなくなりましたが、日本の家族観や社会的な価値観を理解するうえで重要な言葉です。この記事では、「勘当(かんどう)」の意味、使い方、由来、そして現代における使われ方をわかりやすく解説します。

1. 勘当とは?意味を詳しく解説

勘当(かんどう)とは、「親や主君などが、目下の者との関係を断ち、縁を切ること」を意味します。
特に「親が子を家から追い出し、親子の縁を絶つこと」を指す言葉として使われてきました。

例:
・家の名を汚したとして、父親に勘当された。
・彼は勘当されて以来、実家に戻っていない。
・親の勘当を受けて、独り立ちを余儀なくされた。

つまり「勘当」とは、単なる家出や絶縁ではなく、「親から正式に見放される、関係を断たれる」という意味を持つ非常に強い言葉です。

1-1. 読み方と漢字の意味

・読み方:かんどう
・「勘」:考え、罪や過ちを調べるという意味
・「当」:当てる、対処する、処罰するという意味

この二つを合わせると、「過ちを調べて罰を与える」「罪を問い、関係を絶つ」という意味になります。
古くは「罪を勘えて(かんがえて)当つる(あてる)」から転じた言葉だとされます。

1-2. 英語での表現

英語で「勘当」を表す場合は文脈により異なります。

・disown(親が子を勘当する)
・cut off(縁を切る)
・banish(追放する)

例文:
・He was disowned by his father.(彼は父親に勘当された。)
・The lord banished his servant.(主君は家臣を勘当した。)

2. 勘当の使い方と例文

2-1. 親子関係における勘当

・放蕩を重ねた息子が父に勘当された。
・勘当された娘が何年ぶりかに実家へ戻る。
・親に勘当されても、自分の信念を貫いた。

最も一般的な使い方で、「親が子を家族から追放し、戸籍上・感情上の縁を断つ」ことを指します。

2-2. 主従関係や組織での勘当

江戸時代には、家臣が主君の命に背いたり、商家の丁稚が店の掟を破ったりした場合にも「勘当」という言葉が使われました。

例:
・掟に背いたため、店主から勘当された。
・武士としての義に反した家臣を勘当する。

このように、「上下関係における排除・追放」の意味も持ちます。

2-3. 比喩的な使い方

現代では比喩的に「見放す」「関係を絶つ」といった意味でも使われます。

・社長の逆鱗に触れて、会社を勘当されたようなものだ。
・友人に裏切られて、心の中で勘当した。
・趣味仲間からも勘当同然の扱いを受けた。

このように、実際の親子関係に限らず、「仲間や組織から断絶される」意味で使われることもあります。

3. 勘当と絶縁・破門の違い

「勘当」は似た言葉の「絶縁」や「破門」と混同されることがありますが、意味と使う対象が異なります。

・絶縁:親族や友人などとの関係を完全に断つこと。感情的な断絶にも使われる。
・破門:宗教団体や組織が、規律を破った者を追放すること。
・勘当:親や主君など、上位者が目下の者に対して縁を切ること。

つまり、「勘当」は主従や親子など、上下関係を前提とした断絶を意味する言葉です。

4. 勘当の歴史的背景

勘当の文化は、家制度が重視された江戸時代に広く行われていました。
家は「個人」よりも「家名」「血統」「社会的地位」が重視されており、不祥事や非行は家の名誉を損なう行為とされました。

そのため、
・家の名を汚した者
・親の命に背いた者
・不義・不忠を働いた者
は「勘当」として家から追放されました。

また、勘当された者が改心すると、「許し(ゆるし)」を受けて復帰するという儀礼も存在しました。

5. 現代における勘当

現代では「勘当」という制度的な意味はなくなり、法的な効力もありません。
しかし、「親に勘当された」「勘当同然の扱い」という表現は、感情的・比喩的に今も使われています。

たとえば、
・「親に反対されて家を出た」=実質的な勘当のような状態
・「会社をクビになった」=比喩的に「勘当された」
といった使い方です。

つまり、現代では「厳しい叱責や排除」「関係を断つ」という意味で柔らかく使われるようになっています。

6. 勘当という言葉の印象

「勘当」という言葉には、
・重い
・古風
・厳格
・悲劇的
といった印象があります。

単なる喧嘩や家出とは異なり、「一度決裂した関係」「家族の断絶」といった強い感情を含む表現です。
そのため、現代の会話ではやや芝居がかった印象や文学的な響きを持ちます。

7. 勘当の類語と対義語

類語:絶縁、破門、追放、見放す、除名、断交
対義語:許す、和解、復縁、赦免

「勘当」と対になる言葉が「許し」や「和解」です。昔の物語では「勘当の息子が改心し、父が許す」という展開がしばしば描かれます。

8. まとめ

勘当とは、親や主君などが、罪や不義を理由に相手との関係を断ち、縁を切ることを意味します。
かつては家制度の中で行われた正式な断絶行為でしたが、現代では比喩的に「見放す」「絶交する」といった意味で使われます。
古風ながら深い人間関係を表す言葉として、今なお文学やドラマの中で生き続けている表現です。

おすすめの記事