ビジネスメールや会話でよく目にする「重ねてよろしくお願いします」という表現。一見丁寧で便利に思えるこのフレーズですが、使用する場面や相手を間違えると、かえって失礼になることもあります。本記事ではこの表現の意味や使い方、注意点を徹底解説し、ビジネスマナーとしての正しい用法を理解できるように導きます。
1. 「重ねてよろしくお願いします」の意味
「重ねてよろしくお願いします」は、すでに一度お願いをしていることに対して、あらためて丁寧に依頼の意思を伝える言い回しです。
「重ねて」という言葉には、「繰り返して」「改めて」という意味があり、「よろしくお願いします」と組み合わせることで、丁寧かつ謙虚な依頼表現になります。
たとえば、以下のような状況で使われます。
すでに依頼済みの内容に対して再度依頼をしたいとき
複数の依頼があり、すべてに対応してほしいという意図を込めるとき
一度お礼を述べた上で、改めて今後の協力をお願いしたいとき
2. 使用される具体的なシーン
2-1. 取引先へのフォローアップ
既に連絡をしたにもかかわらず、まだ返答がない場合や、今後の対応を依頼する場合に、「重ねてよろしくお願いします」は非常に便利です。催促にならず、柔らかい印象を与えることができます。
例:
「先日はお忙しい中ご対応いただき、誠にありがとうございました。引き続き、何卒重ねてよろしくお願いいたします。」
2-2. 複数の依頼をする際のまとめ
一通のメールで複数の依頼事項を伝えた後、「重ねてよろしくお願いします」で締めることで、すべての依頼に対する丁寧なお願いの意を示せます。
例:
「資料のご確認と、ご意見の共有をお願い申し上げます。お手数をおかけしますが、重ねてよろしくお願いいたします。」
2-3. お礼と依頼を併せて伝えたいとき
感謝の気持ちを伝えたうえで、さらに今後の対応や協力を求める場合にも有効です。単なる依頼ではなく、丁寧な関係構築の一環として使われます。
例:
「先日はご協力いただきありがとうございました。今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、重ねてよろしくお願い申し上げます。」
3. 類似表現との違い
3-1. 「引き続きよろしくお願いします」との違い
「引き続きよろしくお願いします」は、すでに行っていることへの継続的な協力を求める表現です。一方、「重ねてよろしくお願いします」は、すでに一度お願いしていることに再度お願いの意思を示すというニュアンスが含まれています。
3-2. 「改めてよろしくお願いします」との違い
「改めてよろしくお願いします」は、気持ちを新たにするような丁寧な挨拶に使われることが多く、初対面の人との今後の関係に使われがちです。「重ねて~」はすでにある関係性・依頼に対して再度礼儀正しくお願いする意図が強くなります。
4. メールやチャットでの具体例文
4-1. 丁寧なビジネスメールの例
件名:ご依頼事項に関するご連絡
〇〇株式会社
〇〇様
いつも大変お世話になっております。〇〇株式会社の〇〇です。
先日ご依頼いたしました資料につきまして、ご対応いただけますようお願い申し上げます。
ご多忙のところ恐縮ではございますが、重ねてよろしくお願いいたします。
4-2. 社内連絡メールでの使用例
〇〇部 〇〇様
お疲れ様です。〇〇プロジェクトについて、進捗のご共有ありがとうございます。
本件に関し、先日お願いした資料についても併せてご提出いただけますと幸いです。
重ねてよろしくお願いいたします。
4-3. カジュアルなチャットでの例
〇〇さん、
この前お願いした件、確認ありがとう!
あともう一件、同じ内容で別部署にも展開お願いできる?
重ねてよろしく!
5. 使用上の注意点
5-1. 使いすぎは逆効果
「重ねてよろしくお願いします」は丁寧で柔らかい表現ですが、頻繁に使いすぎると、かえって「しつこい」「くどい」と感じられてしまう可能性があります。適切な場面を見極め、ここぞというときに使うのが効果的です。
5-2. 本当に「重ねる」必要があるかを考える
すでに依頼した内容に対して再度お願いしたい場合には適していますが、新規の依頼に対して使うと意味が伝わりにくくなります。「重ねて」という言葉の意味を理解し、文脈に合った使い方を意識しましょう。
5-3. 他の敬語表現と組み合わせる際は簡潔さに注意
例えば「何卒」「恐縮ですが」「ご多忙の折」など、丁寧な表現を重ねすぎると文章が冗長になり、読みにくくなる恐れがあります。敬意を示しつつ、わかりやすい文構成を心がけましょう。
6. 言い換え表現とその使い分け
6-1. 「何卒よろしくお願いいたします」
もっとも一般的な丁寧な依頼表現で、初回の依頼や一般的なお願いごとに適しています。「重ねて」との使い分けに注意が必要です。
6-2. 「引き続きご協力のほど、よろしくお願いいたします」
すでに取り組んでいる案件について、継続的な支援をお願いする際に使うと適切です。プロジェクトやチーム業務などに最適です。
6-3. 「今後ともよろしくお願い申し上げます」
締めのあいさつや、今後の関係継続に向けて使う丁寧な表現です。初対面の相手や、新しい関係の始まりにも使用可能です。
7. まとめ:丁寧で効果的な依頼の一言
「重ねてよろしくお願いします」は、ビジネスにおいて非常に有用な表現です。すでに一度お願いした内容に対し、丁寧に念押ししたいときに使うことで、相手に不快感を与えずに依頼の意を伝えることができます。
ただし、その使用には文脈の理解と節度が求められます。場面に応じた表現の使い分けを意識し、信頼を築ける言葉遣いを心がけましょう。