ビジネスメールや社内コミュニケーションで、「それほど急ぎではありません」と伝えたい場面は少なくありません。しかし、ありきたりな言い回しを使い続けると、相手に誤解を与えたり、やや素っ気ない印象になってしまうこともあります。
本記事では、「急ぎではない」ことを丁寧に伝えるさまざまな言い換えフレーズを紹介します。ビジネスメールやチャットツールでも使いやすい文例を交えながら解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
1. 「急ぎではない」とはどういう意味か
「急ぎではない」という言葉は、「今すぐ対応を求めるわけではない」「多少の猶予がある」という意味を含んでいます。とはいえ、ただ「急ぎではありません」と伝えるだけでは、相手によっては「すぐに対応しなくてもいいんだな」と極端に後回しにされる可能性もあります。依頼内容や状況によっては、その間に問題が発生してしまうケースもあるでしょう。ここでは、まず「急ぎではない」が持つ基本的なニュアンスと、ビジネスでの使われ方を確認します。
1-1. ビジネスで「急ぎではない」と伝える際の難しさ
ビジネスシーンで「急ぎではない」と表現する場合、以下のような問題が生じることがあります。
- 「急ぎではないから」と、かえって無視されたり後回しにされたりする恐れがある
- 依頼内容によっては、具体的な期限や優先度を示す必要がある
このような背景を踏まえ、「急ぎではない」という表現を使う際は、相手にとって分かりやすい情報を付け加えると安心です。
1-2. 「急ぎではない」のバリエーションが必要な理由
「急ぎではない」ことを伝えつつも、完全に無視されるのは困るというケースが多いでしょう。そこで、多彩な言い換え表現を身につけておくと、状況に応じて細かいニュアンスを伝えられます。
- 期限までには対応してほしい
- 余裕のあるタイミングで構わない
- 相談だけしておきたい
これらの微妙な違いを言い分けることで、相手とのやり取りを円滑に進めることができます。
2. 「急ぎではない」を言い換える表現一覧
ここでは、ビジネスメールやチャットなど様々な場面で使える「急ぎではない」の言い換え表現を詳しく紹介します。相手の状況や自分の依頼内容を考慮して、適切なフレーズを選択することが大切です。言い回しを工夫することで、相手に圧をかけず、スムーズなコミュニケーションを図ることができます。
2-1. 「お時間のあるときで構いません」
最もシンプルかつ丁寧な表現です。「空いているタイミングで大丈夫ですよ」というニュアンスを込めることができ、相手が多忙な場合でも「余裕があるときに見てください」と伝えられます。そのため、柔らかい印象を与えやすく、安心感を持たせることができます。また、あらゆるビジネスシーンで使いやすいのも特徴です。
「会議の準備がひと段落した後で構いませんので、こちらの件もご確認いただけますと助かります。」
2-2. 「お手すきの際にお願いします」
「お手すき」は相手が手を空けられる時間を指し、「忙しい時期が過ぎたり、他の仕事が一段落したタイミングで」という意味を含みます。ビジネス上でも頻繁に使われる言葉で、柔らかく上品な印象を与える表現です。特に、上司や取引先など目上の人に対しても使いやすい言い回しです。
「お手すきのときにで結構ですので、こちらの件についてフィードバックをいただけますでしょうか。」
2-3. 「お急ぎでなければ、落ち着いたタイミングで」
「急ぎではない」と直接言うのではなく、「お急ぎでなければ」というフレーズを使うことで、相手の状況を気遣う印象を与えられます。また、「落ち着いたタイミングで」と続けることで、相手にとって都合の良いタイミングで対応できることをやわらかく伝えることができます。
「お急ぎでなければ、業務の合間にでもご確認いただければと思います。」
2-4. 「大至急ではありませんが、〇〇日までにいただけると助かります」
「急ぎではない」と言っても、ある程度の期限がある場合は、「大至急ではありませんが」と前置きをすることで、焦らせる印象を緩和しつつ必要な期日を伝えられます。具体的な締め切りを示すことで、相手もスケジュールを調整しやすくなります。
「大至急ではないものの、できれば今週中にはご確認いただけるとありがたいです。」
2-5. 「差し迫った用件ではありませんので、ご都合のいいときに」
「差し迫った用件ではない」と伝えることで、「いますぐ対応は求めていない」というメッセージを明確にできます。特に、上司や取引先など礼儀を重視すべき相手に対して、柔らかい表現として適しています。また、相手にプレッシャーをかけずに依頼ができるのもこのフレーズのメリットです。
「差し迫った件ではございませんので、お時間のあるときに目を通していただけると助かります。」
2-6. 「急を要するものではありませんので、ご対応可能なときに」
「急を要するものではありません」と明言することで、相手に「今すぐ対応しなくても問題ない」と伝えることができます。加えて、「ご対応可能なときに」と続けることで、相手の都合を優先する印象を与えることができます。
「特にお急ぎいただく必要はありませんので、ご対応可能なときに目を通していただければと思います。」
2-7. 「現時点では特に急ぎではありませんが、ご確認いただけると幸いです」
「現時点では特に急ぎではありませんが」と前置きすることで、今すぐ対応する必要がないことをやわらかく伝えられます。ただし、あくまでも「今のところ」というニュアンスを持たせるため、相手に後回しにされすぎないようにする意図もあります。
「特に急ぎではありませんが、近日中に目を通していただけると助かります。」
2-8. 「念のため共有いたしますので、お時間のある際にご確認ください」
「念のため共有いたします」とすることで、「急ぎではないが、知っておいてほしい情報」というニュアンスを含められます。また、「お時間のある際にご確認ください」と続けることで、相手の状況に合わせて対応してもらいやすくなります。
「ご参考までにお送りします。お時間のあるときに目を通していただければと思います。」
3. ビジネスメールでの具体的な使い方と注意点
上で紹介したフレーズを、ビジネスメールに実際に組み込む場合の例文や、相手とのやり取りをスムーズにするポイントを詳しく紹介します。適切な表現を用いることで、相手にプレッシャーを与えず、円滑なコミュニケーションを実現できます。
3-1. ビジネスメール例文
いつもお世話になっております。□□株式会社の▲▲です。
先日お問い合わせいただいた新商品のサンプルに関しまして、追加の資料を作成いたしました。お手すきの際にご確認いただけますでしょうか。差し迫った用件ではございませんので、お急ぎでなければ落ち着いたタイミングでご返信いただければ幸いです。
また、ご確認に際して何かご不明点がございましたら、遠慮なくお知らせください。必要に応じてオンラインでのご説明も可能ですので、お気軽にご相談いただければと存じます。
ご多忙のところ恐れ入りますが、何卒よろしくお願いいたします。
上記の例文では、「お手すきの際」「差し迫った用件ではございませんので」「落ち着いたタイミングで」などのフレーズを組み合わせることで、相手を急かさずに、柔らかく依頼する表現を用いています。また、「ご不明点がございましたら遠慮なく」や「オンラインでのご説明も可能」といった一文を加えることで、より丁寧で配慮のある印象を与えることができます。
3-2. 注意点
1) 期限や目安を示すかどうかの判断
ビジネス上、「早めに対応してほしいが、大至急ではない」という状況では、あらかじめ期日や目安を示しておくと相手が対応しやすくなります。例えば、「可能であれば〇〇日までにご確認いただけますと幸いです」や「〇〇日ごろまでにご対応いただけますと助かります」といった表現が有効です。
2) 緊急度の誤解を避ける
「急ぎではない」と伝えすぎると、本当に後回しにされてしまい、結果的に業務に支障をきたす可能性があります。例えば、「〇〇日くらいが望ましいですが、ご都合に合わせて調整いただければと思います」といったバランスの取れた伝え方が重要です。
3) 相手の負担を思いやる表現を添える
特に相手が多忙な場合、クッション言葉を活用することで好印象を与えることができます。例えば、「いつもお忙しいところ恐れ入りますが」「ご都合のよいタイミングでご確認いただければ幸いです」といった表現を加えることで、相手の負担を軽減しつつ、配慮のある依頼となります。
4) 相手の状況に応じた表現を選ぶ
相手が上司や取引先の場合、敬意を払った表現を選ぶことが重要です。例えば、「ご多忙のところ恐縮ですが」や「お手数をおかけして申し訳ありませんが」といった言葉を添えると、より丁寧で誠実な印象を与えられます。
5) フォローの仕方を考える
返信がない場合のフォローも大切です。何度も催促すると相手に負担をかけるため、「以前お送りした件につきまして、ご確認状況はいかがでしょうか?」といった軽いリマインドを送るのが望ましいでしょう。
これらのポイントを意識することで、ビジネスメールでの円滑なコミュニケーションが実現し、相手との信頼関係を築くことができます。
4. 相手とのやり取りをスムーズにする工夫
「急ぎではない」ことを伝えたい一方で、必要以上に後回しにされるのは避けたいというケースが多いでしょう。適切な表現を選びながらも、やり取りがスムーズに進むように工夫することで、相手に負担をかけずに対応してもらいやすくなります。ここでは、やり取りを円滑に進めるための具体的な方法を紹介します。
4-1. 進捗共有のタイミングを決める
相手に任せっきりにするのではなく、「いつ頃どんな形で連絡してほしいか」を明示しておくと、適度なタイミングで状況確認ができます。具体的な期限や進捗確認のタイミングを伝えることで、相手も計画を立てやすくなります。
「お手すきの際で構いませんが、来週前半に一度進捗を共有していただけますと幸いです。」
このように、一旦の目安を示すことで、相手も「いつまでに対応すればよいか」が明確になり、対応の優先度を考えやすくなります。特に複数のタスクを抱えている相手に対しては、具体的なタイミングを伝えることが重要です。
また、「急ぎではない」と伝える際に、「進捗がありましたら簡単にご共有いただけるとありがたいです」と一言添えると、相手も適宜状況を報告しやすくなります。
4-2. サブタスクやヒアリング事項を明確にする
相手に対して作業や確認が必要な場合、漠然と「あとで確認してください」ではなく、何をどのように確認するのかを具体的に示すと取り組みやすくなります。
「急ぎではありませんが、次回の会議までに以下の3点についてご意見をいただけると助かります。」
このように、具体的なタスクを示すことで、相手も「急ぎではないけれど、ここは後回しにしないほうがいいかも」と判断しやすくなります。特に複雑な案件や、複数の確認事項がある場合には、リスト化して伝えると相手の負担を減らすことができます。
また、「お手すきの際に〇〇について簡単にコメントをいただければ助かります」のように、対応のハードルを下げる表現を使うと、相手も取り組みやすくなります。
4-3. フォローアップの連絡を適切に行う
「急ぎではない」と伝えつつも、しばらく経っても反応がない場合は、様子を伺いながらフォローを入れましょう。相手が多忙な場合、完全に後回しにされることもあるため、適切なタイミングで軽くリマインドすることが重要です。
「先日ご依頼した資料の件、状況はいかがでしょうか? 〇〇日までにご確認いただけると助かります。」
フォローアップの際には、「お忙しいところ恐縮ですが」「ご都合に合わせて調整いただければ幸いです」などのクッション言葉を使うと、相手にプレッシャーをかけすぎずに対応を促すことができます。
また、フォローアップの頻度も重要です。
締め切りが近づいたら、再度リマインドする
期限を過ぎた場合は、丁寧に再確認する
これらを意識することで、適切なタイミングでフォローしつつ、相手に負担をかけないやり取りを実現できます。
4-4. 相手の状況に応じた表現を選ぶ
相手の状況や関係性に応じて、使う表現を調整することも大切です。例えば、社内の同僚と取引先では、適切なフレーズが異なる場合があります。
社内向け:
「お手すきの際に、〇〇についてご確認いただけると助かります。」
「今週中に一度状況を共有してもらえるとありがたいです。」
社外向け(取引先や上司向け):
「お忙しいところ恐れ入りますが、お手すきの際にご確認いただけますと幸いです。」
「ご都合に合わせてお時間をいただければと思います。お手隙の際にご対応いただければ幸いです。」
このように、相手の立場を考慮した表現を選ぶことで、よりスムーズなやり取りが可能になります。
4-5. 依頼のハードルを下げる工夫をする
相手が対応しやすいように、簡単に済ませられる形で依頼するのも効果的です。「確認してください」ではなく、「〇〇についてコメントをいただければ助かります」や「簡単なフィードバックをいただけると嬉しいです」といった表現にすることで、心理的負担を軽減できます。
また、「まずはご覧いただくだけで結構です」や「お時間がある際に目を通していただくだけでも構いません」といった表現を加えると、相手が気軽に対応しやすくなります。
5. 「急ぎではない」以外の状況別フレーズ
「急ぎではない」に近いものの、微妙にニュアンスが異なる表現もあります。相手に誤解を与えないためにも、シチュエーションごとに使い分けられるよう複数のフレーズを用意しておくと便利です。相手の状況や、伝えたい意図に応じて適切な表現を選ぶことで、スムーズなコミュニケーションが可能になります。
以下では、状況別に使えるフレーズを紹介します。
5-1. 「大至急ではありませんが、〇〇日までに」
ある程度の期限を明示しながら、強い緊急性はないと伝えるフレーズ。適度な締め切り感があるため、相手は取り組む優先順位をつけやすいでしょう。「急ぎではない」と言いつつも、期限を示すことで対応の目安ができ、後回しにされにくくなります。
「急ぎの案件ではありませんが、〇〇日までにご確認いただけると幸いです。」
この表現を使うことで、相手は「急がなくてもいいが、〇〇日までには対応すべきだな」と理解し、適切なタイミングで対応できるようになります。特に、相手の業務が立て込んでいる場合に役立ちます。
5-2. 「もしお忙しければ、もう少しあとでも結構です」
すでに相手が対応中で、急ぎの用件があると想定される場合に使う表現。相手に譲歩する姿勢を見せることで、好印象を与えながら待つことができます。「こちらは急がせるつもりはない」という意図を明確にすることで、相手の負担を減らすことができます。
「急ぎではありませんので、お忙しい場合はご都合の良いタイミングでご対応いただければと思います。」
このようなフレーズを使うと、相手は「急いで対応しなくてもよいが、対応は求められている」と認識します。特に、取引先や上司に対して使うと、柔らかい印象を与えながら依頼ができます。
5-3. 「念のため、お時間のあるときにでも」
最優先ではないが、いずれ確認や対応が必要な場合に重宝する表現。「念のため」は、相手にとって無駄な作業でないことを示しつつも、大至急ではないニュアンスを含みます。この表現を使うことで、「今すぐではないが、確認しておいた方がよい案件」と認識してもらえます。
「大きな問題はないかと思いますが、念のため、お時間のあるときにご確認いただけますでしょうか。」
この表現は、例えば誤りがないかどうかを軽く確認してほしいときや、進捗が止まらないようにするためのリマインダーとしても使えます。
5-4. 「特に急ぎではありませんが、確認いただけると助かります」
対応の期限が特に決まっていない場合に使える表現。相手に柔軟な対応を許しながらも、依頼の意図を明確にすることができます。仕事の負担を軽減する配慮を見せつつ、依頼を伝えたい場合に適しています。
「いつでも構いませんので、問題なければお時間のある際にご確認いただければと思います。」
このような表現を使うことで、相手は「余裕があるときに対応すればよい」と理解し、気軽に取り組めます。
5-5. 「お手すきの際に、ご対応いただければ幸いです」
相手が忙しいと想定される場合に使うと効果的なフレーズ。「お手すきの際に」という言葉を添えることで、相手の都合を尊重する姿勢を見せつつ、対応を促すことができます。
「お時間のあるときで構いませんので、ご確認いただけますと助かります。」
この表現は、ビジネスシーンで丁寧な印象を与えながらも、相手にプレッシャーをかけすぎないため、上司や取引先にも使いやすいです。
5-6. 「優先度は高くありませんが、進めていただけると助かります」
急ぎではないが、放置されると困る場合に使える表現。「優先度は高くない」と明言することで、相手は「後回しにしても大丈夫だが、対応は求められている」と認識できます。
「他の業務が落ち着かれたらで構いませんので、ご対応いただければと思います。」
このフレーズは、相手が抱えている他の業務とのバランスを取るためにも有効です。
6. まとめ
「急ぎではない」を上手に伝えることは、ビジネスコミュニケーションにおける大切なスキルの一つです。相手を無用に急かさず、かといって後回しにされすぎないバランスをとるためには、言い換え表現を複数身につけておくことが有効です。
2. 緊急度を誤解されないよう、期限や期日を明示する場合もあり
3. 相手とのコミュニケーションをスムーズに進めるために、フォローアップや進捗確認などの段取りを整える
4. 場面によっては、「念のため」「もしお忙しければ」などのクッション言葉を使い、相手を気遣う姿勢を示す
ビジネスメールやチャット、会議でのやり取りなど、あらゆるシーンで役立つはずです。今後、コミュニケーションの場面で「急ぎではない」と伝える際は、本記事で紹介したフレーズやポイントを活用してみてください。相手との信頼関係を保ちつつ、スムーズに業務を進める一助になるでしょう。