「外れ値」という言葉は、統計学やデータ分析においてよく耳にするものの、その正確な意味や扱い方については意外と理解されていないことがあります。この記事では、外れ値の定義からその検出方法、そして取り扱いの重要性について詳しく解説します。

1. 外れ値とは?

外れ値(outlier)とは、データセット内で他のデータポイントと大きく異なる値を指します。これらの値は通常、全体の傾向や分布から大きく外れており、特にデータ分析や統計の分野では重要な役割を持ちます。外れ値は、何らかの異常がデータに影響を与えている場合に出現することがあり、無視することもありますが、逆に重要な洞察を提供する場合もあります。

1.1. 外れ値の定義

外れ値は、他のデータポイントと比較して、顕著に異常な値を持つデータです。例えば、通常の範囲に収まっているデータが99%を占める場合、その範囲外に位置するデータが外れ値とされます。外れ値が存在することによって、平均値や分散といった統計指標に大きな影響を与える可能性があります。

1.2. 外れ値が存在する原因

外れ値が発生する原因は多岐にわたります。例えば、測定エラーや記録ミス、データ収集方法の誤りなどが原因となることがあります。しかし、外れ値が示す情報は、時には新しい発見や異常事象を示唆することもあります。

例:

生産ラインでの機器の故障による一時的なデータの異常。

医療データにおける異常な検査結果。

2. 外れ値の検出方法

外れ値を検出する方法は多岐にわたりますが、最も一般的な手法は、視覚的な手法や統計的な手法です。ここでは、代表的な検出方法を紹介します。

2.1. 箱ひげ図(ボックスプロット)

箱ひげ図は、データの分布を視覚的に示すためのグラフで、外れ値を直感的に把握するために非常に有効です。箱ひげ図では、データの中央値、四分位範囲、最小値、最大値を示し、外れ値は箱の範囲外にプロットされることが多いです。外れ値は、通常、1.5倍の四分位範囲(IQR)を超えた点として示されます。

例:

中央値(50%点)、第1四分位(25%点)、第3四分位(75%点)を視覚的に表現。

外れ値は、箱の範囲外に位置するデータポイントとして表示。

2.2. Zスコア

Zスコアは、データポイントが平均からどれだけ離れているかを示す統計指標です。Zスコアが3以上のデータポイントは外れ値として扱うことが一般的です。Zスコアが大きいほど、そのデータポイントは平均から離れていることを示します。

例:

標準偏差を基に計算されるZスコアで、±3を超えるものが外れ値となります。

データセットが正規分布に近い場合に有効。

2.3. IQR(四分位範囲)

IQR(Interquartile Range)は、データの第一四分位数(Q1)と第三四分位数(Q3)の差を示し、これを基に外れ値を検出する方法です。外れ値は通常、Q1から1.5倍IQRを引いた値、またはQ3に1.5倍IQRを加えた値よりも小さいか大きい値として定義されます。

例:

データセットが大きい場合、IQRを利用して外れ値を正確に検出。

3. 外れ値の取り扱い

外れ値が検出された場合、そのデータをどう扱うかは非常に重要です。外れ値の取り扱いを誤ると、分析結果に大きな影響を及ぼす可能性があります。ここでは、外れ値をどのように扱うべきか、その方法をいくつか紹介します。

3.1. 外れ値を削除する

外れ値を削除することは、最も簡単な方法の一つですが、慎重に行うべきです。特に、外れ値が測定エラーや記録ミスによるものだと確信できる場合には削除を選択することが多いです。ただし、外れ値が有益な情報を提供している場合、削除は避けるべきです。

例:

計測機器のエラーで生じた外れ値。

特異な事象を反映した有益な外れ値。

3.2. 外れ値を変換する

外れ値を削除するのではなく、適切な変換を行う方法もあります。例えば、対数変換や平方根変換を使うことで、外れ値の影響を軽減することができます。この方法は、外れ値がデータの変動の一部として意味を持つ場合に有効です。

例:

対数変換で大きな値を抑制し、データを正規分布に近づける。

3.3. 外れ値をそのまま残す

外れ値をそのまま残すことも一つの選択肢です。特に、外れ値がデータの中で意味のある情報を示している場合、外れ値を無視すると重要な洞察を逃すことになります。例えば、金融データでの異常な取引や、医療データでの重大な病歴の兆候などです。

例:

不正な取引や詐欺の兆候を示す外れ値。

新たな病気の兆候として示された異常値。

4. 外れ値が与える影響

外れ値は、データ分析において多くの影響を与える可能性があります。外れ値がそのまま残っていると、平均や標準偏差、回帰分析などの結果に偏りが生じることがあります。ここでは、外れ値が与える影響とその対応方法について考えます。

4.1. 平均への影響

外れ値がデータセットに含まれていると、平均値が大きく歪むことがあります。特に、外れ値が大きい場合、平均値はその外れ値に引き寄せられる傾向があります。そのため、外れ値があるデータセットでは、中央値やモードを使う方が適切な場合があります。

例:

1人だけ非常に高い収入の人が含まれている場合、平均収入が大きく偏る。

4.2. 回帰分析への影響

回帰分析では、外れ値が回帰直線に大きな影響を与えることがあります。外れ値が分析結果に影響を及ぼす場合、ロバスト回帰や外れ値を除いた分析を行うことが必要です。

例:

あるデータポイントが回帰線から大きく外れていると、モデルが適切にフィットしなくなる。

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